五月晴れの最後の休日、グラスを磨いた。
朝、水を飲むことから一日が始まる。
ほぼ300ccは入るグラスに水をなみなみと注ぐ。
朝日に向かってグラスを翳し、呪文を唱える。(笑)
そして、今日の一日が上手く行くよう願いを込めて一気に飲む。
こうして始まる一日は、そうではない一日より、圧倒的に上手くゆく。
たまたま数日前、銀行での待ち時間に手にした雑誌で、「ワイングラスの磨き方」という記事を見た。
うっすらと残る記憶をたどりながら自分でもやってみることにした。
縦に6分の1の大きさに切ったレモンの皮でグラス全体をこする。
レモンのさわやかな香りが部屋中にひろがる。
薄く洗剤を溶かしたぬるま湯でレモン汁と油汚れを洗い流し、乾いた布で磨く。
キッュ、キッュ、キッュ、クゥォ、クゥォ、クゥォ。
気持ちのいい音が響く。
響きは単音ではない。
グラスから、磨く手から、布から、まるごと、音が身体と共鳴して響いてくる。
ぴかぴかに磨き上げたグラスをそっとテーブルに置く。
きらきらと輝き、いつものグラスとは違うモノのように思えた。
なんだか嬉しくなる。
余裕のようなものが生まれてくる。
この気分の良さは何だろう?
あまり仕事が楽しくなかったころ、TVで「サザエさん」が
始まる時間にときどき靴を磨いた。
そうすると翌日、会社に行くことが苦ではなくなることを思い出した。
なるほど、モノを磨くことで準備ができ、ココロに余裕が生まれるのだ。
磨き終えたグラスを、朝日に翳してみる。
水をなみなみと入れ、一気に飲む。
甘露。
よし!やるか