第20号『NO』

「ルビンの杯(壷)」(人の横顔に見えたり杯に見えたりするイラスト)で有名なデンマークの心理学者、ルビンによれば「図」と「地」(Figure and Ground)の「地」は意味を持たず背景的に知覚される部分、「図」は意味を持って浮かびあがって見える部分であると定義している。
ルビンは、この「図」と「地」がどんな法則で判別されるのかについて、多くの研究を行った。
もし、視界の中に何も特徴がなく、「図」となるべき部分が見当たらなかったら(例:真っ白な雪山)、距離感は生まれず、形の知覚は一切生じない。
人は「地」と「図」の関係を認知することによってもののありようを把握するのである。

この講義を受けたのは学生時代、バウハウスで学んだ3人の日本人の中の一人である山脇巌先生からである。
例えば、りんごを描こうとするならば「図」としてのりんごそのものを描くのではなく、背景となる「地」を描くことによってりんごを明らかに描き出すことが可能になる、と。

当然のことであるが、会社を始めるにあたりいろいろとやりたいことを考えた。
会社としての意義や社会的責任、仕事のやり方や年間売上目標と達成方法など・・・。
あまりに多くのやりたいことが目の前に現れた。
事業計画書のようなものも書いてみた。

「数多くの顧客に満足していただけるプランとコンテンツを提供し、その結果として初年度●●円を達成する。」などなど。

しかしなんだかすべて一般論のようにも思えた。

これまで物事はすべからくポジティブに捉え否定的にならない態度で臨むことを良しとしてきた。
もちろんいまでもこの態度を自分の行動規範の基本としている。
「NO」ではなく「YES」ということはいいことだ、と・・・。
しかし、やりたいことを見続けているはずなのにカタチが見えてこない。
まるで「激しく降る雪のなかで見上げた真っ白な雪山」を見ているようだった。
「地」と「図」がはっきりせず、ぼやけて見えるのである。

「すること」ではなく「しないこと」を考えてみた。

ファンサイトの3つの「NO」

・ いやな会社や人とは仕事をしない。
・ 無料でアドバイスはしない。
・ クライアントにぺこぺこしない。

たった3つの「NO」を決めただけだった。
すると「冬の少し濃い青空を背に真っ白な雪山」がクッキリと見えた。
生意気な物言いとお叱りを受けるかもしれない。
しかし、社是である。
当分変えるつもりは無い。

追伸
毎回ファンサイト通信をお読みいただきありがとうございます。
自分でも少し驚いているがファンサイト通信も今回で20号になりました。
ログを覗いてみると毎回メルマガをお送りしている数の数十倍のアクセスをいただいています。
何らかの形で伝言していただいているのではと想像しています。
生意気なファンサイトですが、これからもお付き合いの程よろしくお願いします。

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