先日、友人N氏のライブ・コンサートに行った。
土曜日の昼下がり、人通りもまばらな御徒町。
しかし、階段を下り、地下にあるその小さなライブハウスに入ると、なんともいえない高揚感と緊張感に溢れていた。
「クィーン」のコピーバンドを率いてのライヴ・コンサートをやる。
それが彼の高校時代からの夢だったという。
昔日の想いを達成するその日が遂にやってきた。
当日、3つのバンドが出演したが、そのトリが彼の率いる「クィーン」ならぬ、「ヌィーン」である。
圧倒的な曲目数とその再現の的確さに、往年の「クィーン」そのものを重ねた。
しかし、その技量もさることながら、振り付けからコスチュームにいたるまで、彼のフレディ・マーキュリーと「クィーン」へのオマージュに溢れた徹底ぶりに脱帽した。
そして普段、大手広告代理店に勤め、多忙を極める管理職の顔からは想像できない豹変ぶりにも驚き、楽しめた。
やるんだったら、中途半端にやらない。
この意味がどんなに素晴らしいことか、改めて理解できた。
おそらく、彼のクリエイティブの源泉も、こうした日頃の努力から生まれているのだろうと思えた。
そういえば、本家「クィーン」のメンバーの一人、ギタリストのブライアン・メイ氏が、かつて天文学者を目指し、学んでいたことをつい最近知った。
1971年、24歳のブライアン・メイ氏はロンドンのインペリアルカレッジで天体物理学の博士号取得を目指していた。
彼は惑星間物質の研究で2本の論文に名を連ねていて、1つは科学雑誌「Nature」にも掲載されているという。
しかし、ギタリストとして「クイーン」の立ち上げに加わり、アルバムが大ヒットしたことで、天文学から離れることとなってしまった。
それでも、メイ氏の天文学への興味は失われなかった。
そして、今年、30年以上の歳月を経て博士論文を完成させ、母校の口頭試問をパスした。
メイ氏は今年60歳。
やりたいことを徹底的にやり抜く。
N氏もメイ氏にも同じ匂いを感じた。
過去を懐かしむのも悪くはないが、いまを精一杯生きる。
この心意気には、これから始まる長寿社会を生きる我々にとって、具体的な戦略が詰まっているように思えた。