ここ数週間、本屋さんもCDショップも美術館も、映画館にも行っていない。
行きたいのに行けない。
ムズムズしていた。
雨の火曜日、立て続けにふたつ打ち合わせがキャンセルになった。
突然、ポッカリと時間が空いた。
スッと身体が動いた。
まずはCDショップに行き、手当たり次第に試聴する。
「THE BEST OF RADIOHEAD VIDEO COLLECTION」と「相対性理論のシフォン主義」を購入。
続いて、本屋へ足を向ける。
探していた、岡本一郎著「グーグルに勝つ広告モデル」をあっさりと見つける。
次の打ち合わせ時間まで、まだ十分時間がある。
昼から映画。
高校生の頃、時々授業をサボって映画を観た。
少しの罪悪感と自由を手にしたような高揚感。
本屋と同じエリアにあるシネコンを覗く。
気になっていた映画、石井克人監督作品『山のあなた』を観る。
この『山のあなた』は70年前に作られた清水宏監督作品『按摩と女』を再現したものである。
既に存在するオリジナルを超えるのではなく、超えないように再現すること。
実は再現の方が、リメイクやリイメージより遥かに難易度の高い作業ではないか。
草薙剛、加瀬亮、三浦友和、堤真一、渡辺えり子、松金よね子らの確かな役者陣と、手練な美術、音響、照明、撮影スタッフ、そして細部に行き届いた演出。
すべにおいて丁寧な作りである。
映画『山のあなた』に日本映画とは何か。の、答えを見たような気がした。