拮抗、対峙、対決。
それぞれに一人で立つものたちが並ぶと、どんな変化が生まれるか?
その様が見たい。
茹だる暑さのなか、上野の東京国立博物館で開催されている展覧会場へ出掛けた。
『対決 巨匠たちの日本美術展』
日本美術史上に輝く英雄列伝を一対のものとして観た。
例えば、運慶と快慶、雪舟と雪村、永徳と等伯、光悦と長次郎、宗達と光琳、鉄斎と大観という具合に、である。
展示されている最初の対決は運慶と快慶。
二体の地蔵菩薩立像が並ぶ。
一つは京都・六波羅蜜寺所蔵、運慶の地蔵菩薩立像。
一つは奈良・東大寺所蔵、快慶の地蔵菩薩立像。
同じ、地蔵菩薩立像だが作風は明らかに違う。
力動感のある作風の運慶。
方や、快慶の作風は静的で端正な知性を感じる。
二人は平安末、鎌倉初期ともに仏師として同時代を生きた。
しかも快慶も運慶も共に運慶の父、康慶の弟子である。
それぞれがライバルとして、どんなことを考え、話し、作品と向き合っていたのだろうかと想像すると楽しくなる。
さて、この12組の対決、なかでも狩野永徳と長谷川等伯の対決が凄まじい。
彩の永徳。
墨の等伯。
桃山画壇の寵児といわれた永徳は当時、中心的な画工であった狩野派の長、狩野元信の直系として育ち、その才能を思う存分に開花させていた。
そして、その特徴はなんといっても大胆で且つ華麗な彩。
その代表作が檜図屏風。
一方、等伯は能登七尾の染物屋の養子として育ち、30歳を過ぎて京に出て本格的な画業に就く。
その特徴は湿潤な大気にみちた墨。
その代表作が松林図屏風。
そして、わずか10年足らずで永徳のライバルにまでなっていく。
12組の対決と、百点あまりの作品の数々を堪能することができた。
改めて日本美術の豊潤さを認識することもできた。
この上質な企画に拍手を送りたい。
『対決 巨匠たちの日本美術展』
場所:東京国立博物館 平成館
会期:8月17日まで
お知らせ
8月15日(金)は配信をお休みさせていただきます。
次回、ファンサイト通信297号は22日(金)配信です。