どうしてもアプローチしたいと思っていたメーカーの役員に、幸運にもプレゼンをする機会を頂いた。
入念に準備し、その場に望んだ。
ところが、プレゼンが始まってすぐ、緊急の連絡が入った。
秘書からのメモに目を通した後、役員の表情が曇っていくのが見て取れた。
「直ちに、此処から出発しなければならないことが起きた。」
非を詫び、再度予定を組むからと丁寧に言われた。
「勿論!」と答えたが、この後再びプレゼンの機会をいただけるとすれば、かなり先になりそうな予感がした。
そこで、役員が出かけるために秘書が準備をしている間の時間をいただき、プレゼンさせてくれと頼んだ。
「では単刀直入に」と前置きし、「ファンサイトとは何か?」と問われた。
「時間もないし、一言で答えて」と。
「ウム」と息を呑み、「ファンサイトとはファン=お客様を集めてから、ビジネスを考えるというマーケティングの方法です。」と答えた。
「つまり、集まっていただいファンに、どんなサービスや商品なら欲しいか、と聞いてからアイディアを練り、提示する。」のだと答えた。
企業が予め用意したサービスやモノを提供するための方法を考えることが、いままでのマーケティングだとすれば、その真逆の仕組みを提示することなのだ。と。
役員は「なるほど・・・」と云い、足早にエレベータに乗り込んだ。
役員室に一人取り残された格好になった。
慌ただしさの中で、予め用意していたことではなかったが、この時、確かに「ファンサイトとは何か」がポロリと生まれ落ちたと感じた。