第473号『映画「宇宙兄弟」を観た』

【宇宙兄弟パンフレットから】
【宇宙兄弟パンフレットから】

映画『宇宙兄弟』を観た。
評判は賛否両論。
特に、熱心な原作ファンから酷評されている。
言い分は、マンガでの表現や人物像がきちんと踏襲されていない、ということらしい。
僕は、マンガ版『宇宙兄弟』は2巻までしか読んでいない。
だから声高には言えないが、それでも、この意見に与することができない。

有り体に言えば、原作がマンガであっても、マンガはマンガ、アニメはアニメ、映画は映画である。
それぞれ似て非なるもの。だ。

では、何を持って評価の対象とするのか?

つまり、映画にするということは、映画でなければ出来ない表現と物語が描かれているかどうかで決まる。

まずは演出の、森義隆監督。
初監督作品はマイナー長編映画『ひゃくはち』(ヨコハマ映画祭新人監督賞)のあと、いきなりのメジャーデビュー。
(新人監督の起用を、プロデューサーとして、どうやって経営陣に対して説得したのか、今度聞いてみたい)
前作と同じように愚直な演出と、テレビマンユニオンで培ったドキュメンタリー的な手法が上手く絡み合い、2時間の硬質だが温かさのある作品に仕上がっている。

そして、主演の小栗旬。
当初は、ミスキャストではないかと言われていた。(大泉洋が適任だとの声が多かった)
本音をあまり出さない兄、ムッタ役の本質を小栗の抑制した演技が、見事に体現していた。
結果として、この演技が、映画に厚みを持たせている。
小栗にとっても、新境地を開いたのではないか。

さらに、注目したいのは、VFX(ビジュアル・エフェクトの略で特撮のこと)を手掛けた、オムニバス・ジャパン社の古賀庸郎らによる圧倒的なロケット発射シーンの音と映像。
劇場でしか味わえない迫力、これだけでも見物である。

さて、この映画主題歌には、いまや世界的なロックバンド、コールドプレイの
「ウォーターフォール/一粒の涙は滝のごとく」の使用も見事に獲得した。
逸話はこうだ。
もともと、原作者がこの曲を聴きながら作画をしていた。
その話しを聞いたプロデューサーが、フジロックでたまたま来日していた彼らに、ダメもとで、「ウォーターフォール/一粒の涙は滝のごとく」のサウンドを入れたプロモーション映像を急遽製作し、手渡した。
そして、2週間後、彼らから、まさかの使用許可。
「ぜひ主題歌に!」との連絡が入ったのだ。

その他に、JAXSA(独立法人 宇宙航空研究所開発機構)やNASAでは、これまでロケ撮影などの使用では、ほとんど許可したことがなかったという。
その障壁を突破し、撮影にこぎつけた。
気が付けば、初めて、あるいは異例ずくめのことをやってのけたキャスト、スタッフの想いが
伝わってくる映画でもあった。

諦めず、夢を叶えるために頑張るピュアな想い。
宇宙という未知なる空間と、そこへ行ってみたいと願い、夢をもつ人々と、兄弟の熱い想いが描かれた物語。
観終わった後、前向きで、元気になる映画だった。

この週末、映画館で『宇宙兄弟』を観て下さい。
そして、この映画の話しをしよう。

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