第511号『さいおうがうま』

【濱マイク劇場用ポスター】
【濱マイク劇場用ポスター】

春分の日、伊勢佐木町にある横浜ニューテアトルで上映されている映画、私立探偵・
濱マイクシリーズ第2作目『遥かなる時代の階段を』(林海象監督作品)を観に出か
けた。
「第2回横浜みなと映画祭」のイベントの1つとして上映された。

20年前、黄金町にあった横浜日劇でシリーズ第1弾『我が人生最悪の時』を中学生だ
った倅と観た。
この映画には、ちょっとしたトリックがあった。
劇中で描かれている「濱マイク探偵事務所」が横浜日劇の中にあり、主演の永瀬正敏は、
いままさに、観客である僕たちが観ている映画館を出入りするという、なんとも幻覚
的な面白さがあった。
ともあれ、久々にスクリーンで観ることができると、喜び勇んで出かけた。

関内駅に上映1時間前に到着。
少し早すぎたかと思い、伊勢佐木町モールの上島珈琲店でお茶を飲み、時間を調整し
劇場へ向かう。
近づくと何やら、人だかりが見える。
それは、劇場入り口からの行列が通りの角を曲がりさらに延びている。
最後尾と書かれた看板を持つ係の人に聞けば、満員(立ち見客も含めて)で入場不可
だと分かった。
事前に情報を確認しなかった自分と、認識の甘さ(マイナーな映画だし、まさかここ
まで人気のあるプログラムとは思わなかった)を自省した。
残念ではあるが致し方ない。
またの機会と、泣く泣く諦めた。

あてもなく、関内の伊勢佐木町から関外の吉田町方向へとぶらぶらと歩く。
なにやら、油で揚げている香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。
時計を見れば午後1時に近い、急に空腹を覚えた。
見れば、天婦羅「登良屋」と年季の入った暖簾が春風にそよいでいる。
吸い込まれるように暖簾を潜り、店内へ。

こざっぱりとした調理場、料理人の威勢の良い「いらっしゃい」とのかけ声。
仲居さんもテキパキとした身のこなし。
美味いものを食べさせてくれる店に共通しているそれがある。

さっきまでの、目的を達成できなかったモヤモヤとした気分がワクワクとした期待に
変わった。
さて、どんな料理が出てくるのかとビールを飲みながらしばし待つ。

しかして、鰹の刺身も天ぷらも期待に違わずどれも旨い。
そして、熱燗も。

じんかんばんじさいおうがうま。
かくも単純に幸せになれるこもごもに感謝した。

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