憂鬱である。
消費税や法人税などの納付が今月末に迫っている。
とりわけ、消費税は国から一時預かっているお金だから即刻納めるのは当然のことである。
しかし、である。
零細企業のおやじの身としては、三桁を超える額を、一遍に支払うのはかなり辛い。
それでも、毎回なんとか頑張って納めてきた。
さらに、これから先、消費税8%になったらどうなることやら・・・。
そんな鬱々とした気分でいた時、ロバート・アルドリッチ監督の遺作、映画『カリフォ
ルニア・ドールズ』(1981年製作作品)を大森キネカで観た。
この映画を初めて観たのは30年も前のことである。
観終わって場内から拍手がおこり、身震いしたことを覚えている。
それ以来、日本での再上映はおろか、DVDの発売も今に至るまでまったくなかった。
僕にとっては幻の映画の1本であった。
お話はダッグを組む女子プロレス2人と、そのマネージャー(ピーター・フォーク)
が、どさ回りの旅を続けながら夢を掴むまでの汗と笑いと涙のロードムービーである。
映画は、工場の煙突から煙が立ちのぼるオハイオ州の工場地帯。
この風景をバックに、中古のおんぼろセダン車が走るシーンから始まる。
余談だが、煙突が出てくる映画にはなぜか佳作が多い。
例えば、マイケル・チミノ監督作品『ディア・ハンター』、井筒和幸監督作品『ゲロッパ』、
黒澤明監督作品『天国と地獄』等など。
さて、話を戻そう。
彼らの試合会場は工場地帯「ヤングスタウン」にある場末のアリーナ。
観客は、中高年の工場労働者や有色人種など、負け組として取り残された人々。
試合が終われば、ジャンクフォードを食べ、タバコを吸い、安モーテルに泊まりながら
彼女たちの興行の旅は続く。
この映画は、明るい兆しなど何一つ見えない底辺を彷徨う人々の生活を克明に描いている。
しかし、一つのチャンスからあらゆる手段を使い、這い上がろうと奮闘する彼らの覚悟と
勇気をユーモラス豊かに描いている。
そして、旅を続けながら、いつしかマネージャーについていくだけだった彼女たちは、自ら
の運命を自分たちで決めていくまでに成長する。
ロバート・アルドリッチ監督は、弱者の立場に立ち、応援する作品が多い。
例えば『北国の帝王』では、世界恐慌時、職を失った底辺の人々は放浪しながら食いつなぐ
しかなかった。
その移動手段が鉄道。
鉄道会社から雇われ、放浪者を列車に無賃乗車させないことに命を賭ける男(アーネスト・
ボーグナイン)と、これまでどんな厳しい警戒態勢をもかいくぐり、列車に乗り込んできた
「北国の帝王」と呼ばれる伝説の男(リー・マービン)の戦いを描いた作品である。
例えば『ロンゲスト・ヤード』は、アメリカンフットボールを通して、刑務所内で虐げられて
いた囚人チームが、看守チームに一矢報いるというお話である。
さてさて、脱線したが話を映画『カリフォルニア・ドールズ』に戻す。
クライマックスの試合で、マネージャーのピーター・フォークは子供たちに小銭を渡し、
やらせの応援団に仕立てる。
始め単なるやらせだった応援が、試合が進行していくに従い、彼女たちの戦いぶりに対し
て満場の熱狂的な声援に変わっていく。
気がつけば、涙し、笑いながら、僕も映画の中の「カリフォルニア・ドールズ」を爽快な気分で
応援していた。