第732号『ペン・シャープナー』

【小学校4年から使っている鉛筆削り】

連休が終わり、仕事が始まった。
そして、このファンサイト通信も2週間ぶりに配信する。
たかだか、個人ブログの域をでないものであっても、文章を書くことに集中すること
はそれほど容易ではない。

聞くところによれば、プロの書き手には自分なりの集中するための儀式(とでも言う
ようなもの)を持っている人が多いという。
例えば、吉村昭(ボクは個人的に「漂流」が好きだ)は、部屋中を徹底的に掃除する
ところから始めるという。
例えば、中島らも(やはり「ガラダの豚」が1番好き。こいつは本物の天才だと思っ
た)に至っては、机の引き出しの中にバーボン一本入れておき、書き始めにラッパ飲
みしたという。

さすがに中島らもの事例を見習うことはできないが、宇野千代の方法なら、なんとか
真似ることが可能ではないかと思っている。

宇野千代は文章を書くときの心がけを、次のように記している。
大好きな文章なので、少し長いが引用する。

「毎日書くのだ。書けるときに書き、書けないときに休むというのではない。書けない、
と思うときにも、机の前に坐るのだ。すると、ついさっきまで、今日は一字も書けない、
と思った筈なのに、ほんの少し、行く手が見えるような気がするから不思議である。書
くことが大切なのではない。机の前に坐ることが大切なのである。机の前に坐って、ペ
ンを握り、さァ書く、という姿勢をとることが大切なのである。自分をだますことだ。
自分は書ける、と思うことだ。」

ブレない心の佇まいを感じる。

さて、ボクの書き出し方法である。
いつも、小説やエッセイを読んでいて心を動かされたり、表現が気になり線を引いたり
したものの中から、幾つかを専用のノートに書き写し、貯めている。
このノートをパラパラとめくり、気になったところを読み返しているうちに、なんとな
く、書きたいことが浮かび上がってくるのだ。

最後に、宇野千代の言葉をもう1つ。

「何事をするのにも、それをするのが好き、という振りをすることである。それは、単
なるまねでもよい。すると、この世の中に、嫌いなことも、また嫌いな人もなくなる。
このことは、決して偽善ではない。自分自身を救う最上の方法である。」