【フィギア】
年間100本の映画(新旧あわせ、劇場だけではなくDVDも含んで)を観ることを目標にし
ている。
しかし、残念ながら2017年は82本にとどまった。
昨年、観た映画を振り返り、私的な「2017年ベスト10」を発表してみたい。
1.『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
2016年製作
ケネス・ロナーガン監督作品
『ギャング・オブ・ニューヨーク』などの脚本を担当してきたケネス・ロナーガンが監督。
本作でプロデューサーのマット・デイモンが監督として臨む予定であったが、脚本依頼後
の過程のなかで、ケネス・ロナーガンにメガホンを託したという。
主演は『アルゴ』の監督および主演、ベン・アフレック(マット・デイモンとは学生時代
からの仲間)の弟、ケイシー・アフレック。
主人公リーは、ある出来事をきっかけに、自らが心を閉ざすことになった過去の悲劇と再
び向き合うことになる・・・。
静謐だが緊張をはらんだ画面。
確かなシナリオとしっかりとした演出、それに答えうる演技力を感じた。
本作で第89回アカデミー主演男優賞と脚本賞を獲得。
2.『ラ・ラ・ランド』
2016年製作
デミアン・チャゼル監督作品
前作『セッション』の若き才能が、ミュージカルでもその天才ぶりを発揮。
デミアン・チャゼル監督は本作で第89回アカデミー賞、史上最年少で監督賞受賞。
3.『光をくれた人』
2016年製作
デレク・シアンフランス監督作品
この監督の作品には、ハズレがない。
これまでも、『ブルーバレンタイン』『プレイス・ビヨンド・ザ・バインズ宿命』そして
『光をくれた人』と。
今作は、M・L・ステッドマンの小説「海を照らす光」を原作に、他人の子供を自分の娘と
して育てようとする灯台守とその妻の愛と葛藤の日々を描く。
監督は徹底的にリアリズムに拘り、役者を追い込む。
そのひとつの表れとして、『ブルーバレンタイン』でもそうだったように主演の男女が映
画撮影を離れた後(演技としての疑似恋愛ではなく)結ばれるという逸話があるようだ。
今作で『スティーブ・ジョブズ』などのマイケル・ファスベンダーと、『リリーのすべて』
のアリシア・ヴィキャンデルもその一組だと聞く。
4.『ブレードランナー2049』
2017年製作
ドゥニ・ビルヌーブ監督作品
SF映画の金字塔『ブレードランナー』の続編。
前作から30年後の2049年を舞台に、違法レプリカント(人造人間)処分の任務に就く主人公
が巨大な陰謀に巻き込まれる様子を活写する。
新旧のブレードランナーを『ラ・ラ・ランド』などのライアン・ゴズリングと、その存在感
が増すばかりのハリソン・フォードが熱演。
『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がメガホンを取り、前作の監督を務めたリドリー
・スコットが製作総指揮に。
今作、いろいろと賛否はあったが、僕は間違いなく語り継がれる佳作になったと評価する。
5.『あゝ荒野』(前篇・後篇)
2017年製作
岸善幸監督作品
横浜黄金町にある、映画館ジャックアンドベティにて、前・後篇合わせて5時間続けて観たが、
この作品にぐいぐいと惹き込まれた。
劇作家・寺山修司の小説を映画化。
時代設定を近未来(20121年)に変更し、社会に見捨てられた2人の男がボクシングを通じて
出会い、奇妙な友情を育んでいくすがたを描く。
少年院に入り挫折を味わった新次を『共喰い』などの菅田将暉。
吃音(きつおん)と赤面症に苦しむバリカンを、『息もできない』(傑出した映画である)で
監督・主演の重責を担ったヤン・イクチュンが演じる。
メガホンを取るのは、菅田が出演した『二重生活』の岸善幸。
ラストの数十秒・・・濃厚な寺山ワールドであり、グッとくる。
6.『プレイス・ビヨンド・ザ・バインズ 宿命』
2012年製作
デレク・シアンフランス監督作品
3位の『光をくれた人』に続き、またもやデレク・シアンフランス監督作品。
今作は『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランス監督とライアン・ゴズリングとの再
タッグによる人間ドラマ。
妻子を養うため犯罪に手を染めるバイクレーサーと彼を追う野心的な警官をめぐる因果が、15
年後の彼らの息子たちへと世代を超え、引き継がれていく、まさにドストエフスキー的な血の
因果、運命の流転の様が描かれる。
7.『キングスマン ゴールデン・サークル』
2017年製作
マシュー・ボーン監督作品
世界的ヒットを記録したイギリスのスパイアクション「キングスマン」の続編。
前作に続き、「キック・アス」(これもなかなかの佳作だった)のマシュー・ボーンが監督を
務める。
イギリスのスパイ機関キングスマンの本部が、謎の組織ゴールデン・サークルの攻撃を受け崩
壊した。
残された、一流エージェントに成長したエグジーと教官兼メカニック担当のマーリンのみ。
2人は同盟関係にあるアメリカのスパイ機関ステイツマンに助けを求めるが・・・
今作も、切れ味鋭いアクションアイデア満載。
8.『ジョン・ウィック:チャプター2』
2017年製作
チャド・スタエルスキ監督作品
銃撃戦とカンフーをミックスした(この接近戦のアイデアが凄い)アクションが話題を呼んだ
『ジョン・ウィック』の続編。
殺し屋稼業から身を引いて静かに生活していた主人公キアヌ・リーヴスふんする元殺し屋が、
再びし烈な戦いに巻き込まれる。
メガホンを取るのは、前作に続きチャド・スタエルスキ。
イアン・マクシェーン、ジョン・レグイザモら前作キャストに加え、『マトリックス』シリー
ズでもキアヌと共演したローレンス・フィッシュバーン、ラッパーのコモンらが新たに参加。
前作を上回る、痛快活劇となっている。
9.『メッセージ』
2016年製作
ドゥニ・ビルヌーブ監督作品
カナダの才気あふれる監督、ビルヌーブにとって初のSF映画。
『ブレードランナー 2049』の監督でもある。
テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」を基にしたSFドラマ。
球体型宇宙船で地球に飛来した知的生命体との対話に挑む、女性言語学者の姿を見つめる。
その女性言語学者を演じるのは『ザ・マスター』(天才、ポール・トース・アンダーソン監督
作品)でも芯のある役作りが光っていたエイミー・アダムス。
10.『TRASH!』
2014年製作
スティーヴン・ダルドリー監督作品
ゴミ山で暮らす最下層の3人の貧しい少年が、ある日、訳ありな財布を拾う。
ここから事件が始まり、絶望の街に奇跡が生まれる。
監督は『リトル・ダンサー』『愛を読むひと』(どちらもお薦めである)のスティーヴン・ダ
ルドリー。
脚本を『ラブ・アクチュアリー』(幸せな気分になれる、ボクの大好きな作品です)などロマ
コメの名手リチャード・カーティス。
間違いなく、面白い作品に仕上がっている。
なぜ、映画を観るのか?
映画好きということが1番の理由だが、世に溢れるコンテンツ群のなかにあって、映画ほど多
くの才能・時間・お金をおしげもなく投下されるものはない。
わずかな支出で、これほどまでに豊かな感情の冒険に浸れる時間はそうそうにはない。
さらに、映画を通して他国の生活や他者の人生を疑似体験することもある。
シンプルであれ、複雑なものであれ、描かれたストーリーを通して、究極的には精神的な共通
項が通底していることを理解することもできる。
つまり、ある種、人間としての原則や普遍性といったものの有り様を知ることになるのだ。
さて、今年2018年は何本の佳作と出会うことが出来るだろうか、楽しみである。