第787号『諦めなければなんとかなる』

【筋トレ用具】

7月初め、朝起きてベッドから床に足を付き、立ち上がろうとしたとき、
左膝にズキンとした痛みを感じた。
ここ数日の記憶を辿ってみても、転んだり、ぶつけたり、捻ったりした
覚えがない。
どうしたんだろうと思いながら、顔を洗い、身支度をしていたが時間が
経つにつれ、痛みが増してくる。

少し不安な気持ちになり、近所の形成外科病院に駆け込んだ。
そして、問診の後、血液検査・超音波(エコー)検査・レントゲン撮影
と入念に診てもらった。
レントゲンを見て、どうやら骨に異常は無さそうだ、血液検査の結果か
ら、痛風でもなさそうだ。
検査のデータを見ながら医師の答えは、原因はよくわからないが、おそ
らく年齢による変形性膝関節炎か、ジャンパー膝だろうとのこと。
わからないことは、なんでも加齢によるものだとするのが一番無難な答
えなのだろうけど、内心「ナンダヨ」と舌打ちしたい気分になった。

こうして、痛みがとれないまま月を跨ぎ、このまま、齢なんだとレース
に出ることを諦めるより外ないかという気分が頭を過った。

そんな時、お盆休みで昼からTVを見るともなく見ていた。
「徹子の部屋」に、女優の赤座美代子さんがゲストとして出ていた。
赤座さんは俳優座養成所、華の15期。
前田吟、地井武男、栗原小巻など、往年の名だたる役者達と同期である。
そして、74歳になるいまも若々しい姿が映し出された。
その若さの源泉は、筋肉トレーニングだと紹介された。
そもそも、筋トレを始めたきっかけが60代のころ、膝の痛みを治すため
だったという。
耳目がTV画面に向いた。

余談だが、赤座さんとお会いしたのは、僕が新卒として入社した日活(
映画会社)にいた時のことだ。
入社すぐの仕事が青春映画の傑作『八月の濡れた砂』の監督、藤田敏八
の制作進行(中身は雑用係)。
その日の撮影が終わると、監督のお供で新宿へ、何軒か打ち合わせと、
ゴールデン街での飲み会を回り、(もう時効となった話だが、赤座さん
は後に敏八監督の3番目の奥様となるのだが、当時まだ籍を入れていなか
ったと記憶している)深夜、赤座さんのマンションになだれこむ。
そして、朝、監督を起こし、調布にある日活撮影所まで連れていく。
こんなトホホな生活が、映画が一本撮り終わるまで続いた。
この続きはまた、別の機会に。

話を戻そう。
そう、筋トレのことである。
1ヶ月以上も続いた足の痛み。
この痛みを解決すべく、病院を変えたり、整骨院に行ってみたりもした。
しかし、なかなか思うように治らない。
ある日、トライアスロンのコーチをしていただいてる、横浜トライアスロ
ン研究所の滝川コーチから、筋トレ(筋トレといっても、ムキムキしたマ
ッチョな太い筋肉ではなく、薄いけど鋼のようにしなやかな筋肉を作る)
とストレッチを組み合わせたトレーニング(ストリングスという)をしよ
うとの提案をいただいた。

そういえば、赤座さんも数回の筋トレで効果があったと、「徹子の部屋」
で話していたことも思い出した。
膝の痛みはあったが、コーチの指導の元、ともかくやってみた。

そして、奇跡ともおもえることが起きた。
なんと、2週間も経たずに膝の痛みが嘘のようにとれた。
加齢であっても筋肉を鍛えることで、膝回りや腰のプロテクターになる。
これは、間違いなく効果がある。

実証実験の結果報告である。
先週の日曜日、横浜海の公園で開催されたアクアスロン(スイムとラン
を組み合わせた)大会に参加し、完走することができた。

筋トレをしっかりと生活の中に取り入れたことで、膝が痛くなく、歩け
るけるようになったことがなにより嬉しい。
さらに、一ヶ月前にはもう運動は諦めるしかないのかなと、弱気になり
悲観していたが、こうしてレースに出て走ることもできるようになった。
まだまだ、トライアスロンも続けられそうである。

加齢と諦めずに工夫すれば、なんとかなる。
そのことを、改めて実感した夏だった。