『ギルマンの方程式』によれば変革は、N−O>CCのときに起こる。
N:新しい方法の、認知された価値
O:古い方法の、認知された価値
CC:変化にともなう、認知されたコスト
イノベーションが受け入れられ、変化が起こるためには、新しい方法と古い方法の「認知された価値の差」が、「転換にともなう、認知されたコスト」よりも大きくなければならない、ということである。
この方程式を9日に行われた衆院選にあてはめてみた。
177(民主)−237(自民)+34(公明)+4(保守新)<絶対安定多数
対象がどちらにしても適切ではないとしても、いましばらくは古い価値のほうがコストバランスがいいという国民の判断であった。
しかしそのコストバランスの一端が崩れようとしている。
イラク派遣に関する政府の報道の推移を追ってみた。
11日:自衛隊の派遣「国民の支持得た」首相会見
イラクへ自衛隊基本計画決定先送り
政府方針、年内派遣、国会で事後承認
13日:イタリア軍本部爆破。テロ制止へ武器使用
イラク派遣陸自「規準」警告など3段階規定
14日:イラク南部に調査団、自衛隊、あすにも出発
15日:自衛隊イラク派遣時期、治安情勢見極め判断
いずれも読売新聞朝刊一面に掲載されたものである。
同盟国であり、日本経済を実質支えているアメリカへの配慮と追随であったとしても、なんだか随分と急いでいる。
むしろ、派遣したという事実を一気に作ることに躍起になっている、という印象を受ける。
派遣の事実→事実の容認→憲法改定議論による是認の醸成→9条改定→軍隊保持の明言→国威発揚→国民の参加意識の高揚→徴兵制
陳腐な順列組み合わせではある。が、ともあれ国民にとって随分と高いコストにつきそうな予感がする。
私たちはこれまで、どういう国家を作るのかという議論も発想もないまま、戦後いきなり手にした「個人の自由」、別名「エゴ」という律するものもなく、想像力の欠落した欲望に支配されてきた。
そして、企業も家庭も学校も社会全体が緊張感と創造力を失って久しい。
できうるなら、私はこうした精神の無防備から逃れたい。
なぜならば、人は僅かばかりの緊張感と創造力を持つことで、悲劇を希望に変えることができると信じているからである。