【『百花』と『ブレスト』】
先月、倅の新刊『百花』(文藝春秋刊)が送られて
きた。
2年前から、今作を準備していた。
早速、手に取りページをめくった。
認知症の母と、その息子の記憶を巡る物語。
あくまでも、小説というフィクションの世界で語ら
れていることであり、それは作家の頭のなかでの出
来事である。
したがって、現実とは違う。
しかし、読んでいて随所に家族や親族でなければ分
かり得ない、癖や習慣についての記述がありハッと
する。
今週、『ブレスト』(角川文庫刊)が届いた。
こちらは、倅の妄想をベースに、映画の企画を組み
立てていく様を綴ったものである。
もともとTOHOシネマズの売店で販売していた『T.』
という雑誌で連載されていたものを、『超企画会議』
(KADOKAWA刊)としてまとめた。
そして今回、文庫版としてタイトルを『ブレスト』
とし、上梓された。
この中でも、僕と一緒に観た映画のことが2,3綴
られている。
ふと思い出した。
あれは、彼が中学2生のときだった。
横浜、黄金町にあった日劇へ『私立探偵濱マイク』
(林海象監督作品)を観に行った。
その帰り、お腹が空き中華料理店に入った。
気がつけば、2時間以上も、いま観てきたばかりの
映画について話が盛り上がった。
演出・シナリオ・役者・照明・音楽・美術のそれぞ
れについて。
そして、それは倅の、映画に対する(熱くて冷静な)
想いを感じた瞬間だった。