【大谷翔平高校1年の目標マップ】
デザインや映像・ウェブを専攻する(学科やコー
スのある専門学校と大学)学生に教えている。
いわゆる、アート系に属する人たちである。
こうした志向の若者たちは、論理的に物ごとを組
み立てたり、言語化することが苦手と思われがち
である。
そもそも、言葉にすることが苦手だから絵を描い
ているのだ、という声もよく聞く。
ところが、実際はそうではない。
いや、むしろ真逆であることが多い。
描きたいことや、作りたいものを言葉にすること
が出来ない学生は結局、形にできない(ことが多
い)。
言葉に出来るということは、ある事柄や、想いの
中から、これだというものを引張り出し、光(照
明)を当て、その輪郭をはっきりさせることがで
きるのだ。
別な言い方をするならば、自分との距離をとるこ
とで、しっかりと眺めることができるわけである。
つまり、物ごとを客観視できなければ、(作りた
いものや企てたいものの)輪郭を描くことはでき
ない。
アートの領域だけでなく、アスリートでも同じこ
とが言えるのではないか。
例えば、大リーグの大谷翔平選手(今シーズン、
昨年に続き早くも二桁本塁打を達成)も言葉に対
する精度とその具現化に優れたアスリートだ。
彼の、高校時代からの目標設定のノート(大谷の
曼荼羅表とも呼ばれているが、この話は別な機会
に)には、実に細かく具体的な目標とそれに向か
う行動が記されている。
なぜ目の醒めるような本塁打が打てるのか?と聞
かれて、大谷選手は「打席に入り、ただ無心に来
た球をバッと捉えてガツンと打つだけだ」といっ
たミスターN氏のような象徴音での表現は、決し
てしないだろう。
足の力の入れ具合や、上半身の傾き具合、また腕
の動きなど無数に分析し、積み重ね、言葉として
理解する。
言葉がぼやけると、目標に向かう精度はもちろん
のこと、トレーニングで何をすればいいのかもぼ
やけてくることを知っているからだ。
深く考えて使われる言葉からは、精度が生まれる。
その精度が高くなれば、おのずと正確な課題が見
つけやすくなり、結果として正確な答えと目標を
設定しやすくなる。
もちろん、本当に大切なことは言葉にできないで
あろうことも重々承知している。
しかし、それでも言葉を使うしかない。
それは、なにかを成し遂げるためには、いまのと
ころ言葉から始めるしか手立てがないからだ。
言葉は身体と心を繋ぐものだから。