第833号『ぶらり大阪の旅-1』

【太陽の塔】

「太陽の塔が見たい」と、妻が言った。
こんなにも暑くなる前の、7月初めのころだった。

TVで1970年に開催された万博の特集番組があり、
「太陽の塔」のプランナーである岡本太郎氏らの当時
の様子を観て、(調べてみると、予約をすれば塔の内
部の展示物も観覧できるなど)興味を持ったという。

振り返ってみれば、僕自身、仕事で何度も大阪に行っ
たが「太陽の塔」も見ていないし、大阪の街も意識し
て歩いたという記憶もない。

こうして、先週末、一泊二日の行程で、僕らは大阪に
出かけた。

今回の旅のメイン「太陽の塔」と内部の観覧。
予約は、日曜日の午後2時から。
到着する土曜日は、ゆっくりと大阪の街と食を楽しむ。
そして、日曜日の午前中に友人たちと合流しランチを
食べ、午後から万博会場跡の公園にある、塔や当時の
資料館でもあるパビリオン(余談だが、このパビリオ
ンはル・コルビュジエの弟子でもある前川國男の設計
である)を見て、夜、新幹線で帰る。

概ね、こんなざっくりプランの旅である。

土曜日の朝、新横浜駅から新大阪へ。
まずは、予約した肥後橋の宿に荷物を置き、梅田でラ
ンチを食べることにした。
阪急梅田駅周辺は、食事処の激戦区だ。

【地下鉄御堂筋線梅田駅構内】

ぶらぶらと歩きながら、お店を物色しているうちに、
新梅田食道街という迷路(この路地は、JR大阪駅と阪
急梅田駅に挟まれた高架下にあり、飲食店のみ100
店舗あまりある)に入り込んだ。
次から次へと、シズル感あふれる看板や暖簾と匂いに、
店を選ぶのに迷う。
路地を2周回ほどして、串揚げ屋「松葉」(のれん越
しにもうすでに、数人の客が飲んでいた)もいいなと
思ったが、その真向かいの階段の上にある店の評判を
妻がしっかりと調べていた。

普段、並んでまでお店に入ることはしないのだが、運
良くまだ5、6人ほどの列だったので並ぶことにした。
このお店は「きじ」というお好み焼き屋さんで、ミシ
ュランガイドにも掲載されている銘店。
モダン焼き、牛すじとネギのお好み焼き、そしてビー
ルを注文した。
モダン焼きは、そばに卵の黄身が絡めてあり、ふわぁ
ふわぁとした食感が絶品だ。
牛すじとネギのお好み焼きも、旨味が口いっぱいに広
がる。

【きじのモダン焼き】

そして、生ビール(サントリープレミアム)が関東で
飲むより、新鮮で美味しく感じた。
高架下にある、小さな(席数15,6席くらいか)空
間であるが、なんとも言えず風情のあるお店で人気の
訳がわかった。

店を出て、妻がもう一箇所行きたい店があると言う。
もう少しなら、お腹に余裕がある。
次の店は、天神橋筋商店街にある「中村屋」というコ
ロッケ屋さんだ。
JR大阪駅から大阪天満宮駅まで、そして徒歩1分ほど
で、どこまでも続く日本一長い商店街が現れた。

【天満橋筋商店街】

大きな商店街だから、店を見つけるのが大変かと思っ
ていたが、直ぐに見つかった。
近づくと、こんがりとした小判のような揚げ物が並ん
でいる。
残念ながらコロッケはすでに売り切れだったので、ミ
ンチカツ(これがまた、香ばしくてミンチの風味もよ
い)を買い、それを頬張りながら商店街を歩く。
ふと見ると、「天満天神繁昌亭」というのぼり旗と建
物が目に入った。

【天満天神繁昌亭】

近づくと、上方落語の寄席小屋だ。
全席指定だったが幸運にも、最後の2席が残っていた。
(コロッケは買えなかったけれど、上方落語の小屋を
見つけ、中入り後の時間にぴったりと間に合い、最後
の指定席が2つ空いていたという奇跡)迷わず、入る
ことにした。

3時30分からの中入り後のチケットを購入(2時開
演の最初からだと2800円だが、中入り後からだと
1500円)し、席に着いた。

お囃子が鳴り、中入り後の演目が始まった。

ぶらり大阪の旅、次回に続く。