【岩塚クオリティ】
「おこせん」「大人のぽりぽりクラブ」と2つのファンサイトを展開している岩塚製菓が、11月12日クオリティサイトをローンチした。
このサイトは、企業が製品といかに向き合っているかを提示するとともに、ファンがなぜ岩塚製菓の製品が好きなのかを理路を持って知り、そして語るための手引書でもある。
さて、ファンとはどんな人で、どんなふうに他者に伝える(口コミする)のか?
これまでファンサイトを作り続けてきて、気がついたことである。
ファンには二つの要素が内在している。
1.自分の感性で好き嫌い・美味しい・心地いい(着心地、履き心地、居心地)・楽しいを、はっきりと言葉で伝えることが出来る人。
2.証拠や根拠などエビデンスをベースに商品やサービスについて語れる人。
この、2つを合わせ持ち、他者に伝え拡めていく人だ。
この事実を発見したのがCカンパニーという、ちょっと風変わりな組織にいたときのことだ。
余談だが、このCカンパニーはもともとヴァンヂャケット(アイビールックのVANを懐かしく感じるのは60歳上の方々だと思うが)の宣伝・広告部門とVAN99ホールのメンバーがVAN倒産後、起こした演劇・音楽・広告・映像・グッズの企画と製作、販売をする会社で、つかこうへい・大津あきら・三枝成彰らも所属していた。
このとき僕が担当していたのが、アシックスのウォーキングシューズの直営店「歩人館」の販売促進だった。
ちなみに、ここでマーケティングのいろはを伝授いただいたのが、恩師で弊社顧問をお願いした故宇田一夫である。
eBook『花も実もない! Marketing One Hit Shot』
1994年、ランニングシューズの老舗アシックスが、その研究成果を、歩くための専門シューズとして開発したのがウォーキングシューズだ。
今や健康維持のための運動として代表的なウォーキングだが、「ウォーキング」という概念がまだ確立していない時代の話しである。
直営店「歩人館」の特徴は、常駐のシューフィッターが足を直接計測して靴選びのアドバイスする。
価格帯も普通の靴に比べれば、多少高額ではあるが当初から評判はよかった。
直営店としては札幌・仙台・東京(自由が丘)・神戸・広島・小倉と全国に6店舗展開していた。
そして、この中で一番売上が良かったのが小倉店。
地理的にも人口数からいっても、なぜ?と思っていた。
出張で小倉を訪れたとき、店長にその理由を聞いてみた。
すると、店長から「A子さんが口コミしてくれるんだ」との返答。
そのA子さんにお会いしてみたいと、店長にお願いした。
そして幸いにもその日の午後、A子さんにお会いすることができた。
A子さんは外反母趾で、長年靴選びで悩んでいた。
靴を求めて、飛行機や新幹線で東京や大阪まで交通費をかけ、専門店で数万円ときに10万円以上もの靴を購入してきた。
ところが小倉に「歩人館」が誕生したことで交通費も含めると、その3割4割で履き心地の良い靴を手に入れることが出来るようになった。
この、喜ばしい事実を九州にいる外反母趾と足に問題を抱えている仲間たちに伝えているのだ、と。
小倉の街ばかりか、九州全域が商圏だったのだ。
なるほど、高売上の理屈がこれでわかった。
そして、もう1つ驚いたことがある。
それは、ウォーキングシューズに関しての機能的な知識を披瀝してくれたことだ。
例えば、衝撃吸収材として「アルファーゲル」が、かかと部分に搭載されていること。
例えば、足型に足指の関節が曲げやすく、足指を自由に動かせる「フレックスカーブ」を採用していること。
例えば、ソールに泥跳ね対策として排水溝「ドレンスレット」を施していること。
これらは、いずれも特許を取得している技術ばかりである。
こうした、データとエビデンスに基づいたお話をしっかりと伝えることが出来る人だった。
A子さんは単に履き心地が良いだけでは納得がいかず、店長からウォーキングシューズの機能の話を聞き出していたのだ。
実感とエビデンス、この2つのことを外反母趾や足に問題を抱えている友だちや仲間に伝え拡めた。
説得力あるA子さんの口コミで、九州全域から小倉店詣が始まった。
この事実を知り、試みとして他の直営店長を通して、ウォーキングシューズのクオリティについて(この時代はサイトが存在していなかったので)パンフレットを作成しファン(各店舗ごとにファンは必ず存在している)の方々に配布してみた。
すると、驚いたことに結果として、どのお店も売り上げに反映するものとなった。
ファンは、自分の想像を超えた体験を語りたい。
ただし、自分の感性の発露だけでは物足りない。
だから、そのためには根拠となるものが必要なのだ。
ファンに自社製品やサービスのクォリティを理解していただくためにも、これからの企業のウォンドメディアとして、「ファンサイト」と「クオリティサイト」は、対をなす必須サイトであると確信している。