第535号『釣った魚にこそ餌を!』

【おもてなしの一輪】
【おもてなしの一輪】

これまで二回、商工会が主催する「経営塾」に講師として参加したことがある。
講義のテーマは、インターネットを活用しての販促活動。
ここで、中小企業が抱える共通した悩みの一旦を知ることができた。

例えばA社。
製品の完成度も高く、大手流通企業との契約を穫れそうなところまでいった。
その後、一定量を安定的に供給することができず話はたち切れ。
現状は出し先(市場)に窮している。
例えばB社。
商品開発で公的予算が付き、ブランド化と称して、デザイナーやプランナーが関与。
オシャレなパッケージと気の利いたネーミングの商品に仕上がった。
しかし、予算はここまで。
その先の販路展開は置き去りにされたまま。

だから、今更ながら、ネット販売でどうにかならないかと。
残念ながら、どうにもならないと答えるしかなかった。
ネットでどうこうするよりも、地元で元々のお客様を大事に育てるほうが先ではない
かと、一言添えた。
こうした催しの不毛さを感じ、以後いっさい参加していない。

お付き合いのある企業の多くは、顧客との関係を大切にしている。
しかし、その一方で、最重要事項は新規顧客獲得であって、既存顧客やファンは価値
が低いものに見られがちである。
なぜ、こうした従来のマスマーケティング手法に拘泥してしまうのか。

以下、私見と憶測である。
組織のなかで決定権をもつ立場に立たされた時、いかに成果をあげることが出来るか?
しかも2、3年で。
代理店から示される数字的な根拠と、これまでの手慣れた手法を採用するほうがリスク
が低い。
おそらく、こんなところではないか。

つい最近の、象徴的事例である。
3キャリアによる、iPhoneの新規顧客獲得合戦。
長く使い続けている優良なお客様より、毎回、会社を乗り変えている利用者の方が、
キッシュバック等で優遇されている事実。
なにか違和感を覚えずにはいられない。

もちろん、中小企業と大企業を一律に並べることはできないだろう。
それでも大小の規模に関わりなく、企業はそろそろ、本気でマスマーケティング以外
の展開に取り組むべき時が来ているのではないか。
それは取りも直さず、顧客の顔をしっかりと想い描くこと。
そして、優良顧客としてのファンが口コミ、ファンを醸成していく場を用意すること
から始まる。

釣った魚にこそ餌を!
そして、大魚に育てよ!

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(谷口ももよ・山口はるの・森村芳枝・伯母 直美 ・渥美 真由美・木村幸子マイスター)

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