第926号『神殿か獄舎か』

9月後半、禁を破った。

緊急事態宣言の最中、県境をまたぎ都内に一泊二日で妻と遊覧の旅をした。

宿は、三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア。

おそらく数年後、数十年後、令和を代表する建造物として語られるであろう、隈研吾の意匠による新国立競技場を眼下に観る部屋を確保できた。

どうしてもこの目で観たいと思った理由は、果たしてこの建造物は『神殿なのか、それとも獄舎なのか』というものであった。

著書『都市廻廊』では毎日出版文化賞を、『建築有情』ではサントリー学芸賞を受賞した建築批評の長谷川堯、『神殿か獄舎か』に影響されてのものである。

70年代、美大生だった頃、この『神殿か獄舎か』を恩師柏木博先生に奨められ読んだときの衝撃は、未だに余韻として心の底にもち続けている。

その論説に傾倒し、友や恩師とも議論した。

『神殿か獄舎か』は文字通り、神殿と獄舎の対比である。

前者には東京駅や日本銀行本店の辰野金吾、代々木体育館や東京都庁の丹下健三、日本万国博覧会お祭り広場やカザルスホールの磯崎新らが属し、国家権力の意思に応えようと、視覚的に優れたモニュメントを建立する姿勢を指す。

翻って後者には豊多摩刑務所の後藤慶二、読売会館や旧横浜市庁舎の村野藤吾、神田東条書店やカフェ・キリンの今和次郎らが属し、装飾と手触り感に注力することで建築が持つ逃れられない罪深さ(どんな公共建築も権力と分かち難く結びつき、人の自由を奪う宿命)と向き合い、装飾と触覚を通じて利用者と建築が結ばれるべきだと長谷川は主張した。

余談だが、長男は俳優の長谷川博己である。

知性を感じる演技力は、父譲りのものがあるのかも知れない。

さて、旅の当日は快晴。

京急線で横浜からそのまま都営地下鉄浅草線へ。

大門で乗り換え都営大江戸線で、最寄りの新国立競技場駅へと向かった。

地下ホームから地上へはエスカレーターで、建物4階分はあるかと思うほどの距離(深さ)である。

地下から上がって来たせいもあるのか、日差しが眩しいほどに感じた。

そして駅を出ると斜め前にホテルが見えた。

思っていたよりも小ぶりだが、スッキリとモダンな佇まいのホテルである。

新国立競技場はどこかと、振り向く。

グワアッ!と視界をはみ出すほど巨大な建造物、それが新国立競技場だ。

全体が見えない掴めないという、なんとも形容し難い不安。

それは裏を返せば、分けのわからない畏怖の念と言い換えてもよいものだ。

一刻もはやく巨大な建造物の全体像と相対したいと、ホテルへ急いだ。

部屋は11階。

ドアを開けると、窓の外にはベランダがある。

ベランダに出ると真正面にまるで手で触れられそうなほど間近に、この巨大なモニュメントが横たわっている。

全体像を観て、改めてその大きさに驚く。

しかし、そのスケール感はかつて観たバルセルナのサグラダファミリアでもなければ、ローマのコロシアムとも違う。

東京という風土にしか生まれ得ない「粋さ」のようなものを感じた。

しばらく、この情景を眺めたが飽きることがない。

今晩はこの建造物をつまみにして一献やるしかないと、買い出しに行き酒を用意した。

この新国立競技場ははたして「神殿なのか、それとも獄舎なのか」?

しかし、少し酔いすぎた頭ではその答えを見出すことはできなかった。

追伸

翌日、一周1,5キロのこの新国立競技場を3周ほど走った。

昨夜の酔いを汗で流し、部屋に戻ってシャワーを浴び再びベランダに出た。

そして、「神殿か獄舎か」と呟きながら祝祭の終わった後のこの巨大なレガシーを眺めた。

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