月曜日の昼下がり、愛猫リリーが死んだ。火曜日、土砂降りの雨の朝、荼毘にふされた。
リリーは、我が家のあちらこちら(本箱の隙間だったり、押入れの隅っこだったり)数箇所にお気に入りの場所がある。その場所には毛布やタオルを敷いたカゴや箱が置いてある。”リリー”と声をかけるとその何処かから頭をもたげ、私はここに居るよと彼女の存在を示してくれた。しかし、今日は、”リリー”と呼んでみても姿はない。いまはただカゴや箱の形状の穴だけがポッカリと空いている。
4月頃から突然、大量に嘔吐を繰り返すようになった。もちろん、これまでも毛玉を吐き出すようなことはよくあったが、それとは明らかに違う。以前、避妊治療をお願いした獣医さんに連絡をとり、受診した。初診では、食物アレルギーではないかとの見立ててで、餌を変え様子をみた。しかし、一向に良くならなかったため、吐き止めと栄養剤の点滴を受けた。数日は吐くこともなく過ごしていたのだが、再び嘔吐を繰り返すようになった。
こうして何度か受診したのだが、原因がわからない。原因不明のもどかしさをなんとかしたいと、6月には入院してCTスキャンを撮ることになった。結果は、腸の内側と外側に大きな腫瘍が見つかった。獣医さんからは、「癒着しており摘出はできない。腫瘍には何種かあり、抗がん剤が効果を発揮する腫瘍は1種類で、この腫瘍がそれに当てはまるどうかは定かではない。覚悟が必要だ。」そして、帰り際「余命1ヶ月程度ではないか・・・」とも告げられた。やせ細り体力もなく通院も点滴の注射も辛くて、帰宅してからも、ずっとうずくまっている。その様子を見て、もう無理に通院はさせず家で見守ることにした。
7月には、これまで食べていた固形の餌はいっさい食べなくなり、水もほとんど飲まなくなった。唯一、ジェル状の餌だけは指に乗せてペロペロと舐めながら食べてくれる。この餌を探し当てるまでに、あれこれと試行錯誤した妻の必死の想いと、その行動が功を奏したのか、カレンダーは10月になり10歳となった彼女の誕生日を一緒に過ごすことができた。
ひょっとしたら、年末まで、いや来年まで生きてくれるのでは、とさえ思った。しかし、10歳と数日の命であった。日々の暮らしの中で、僕たちの心模様も晴れの日ばかりではなく、曇りの日もあれば土砂降りの雨の日もある。リリーが居てくれたおかげで、妻や僕の心が癒やされ、そしてどれほど救われたことか。僕たちのもとに来てくれたことに、あらためて感謝したい。
リリーありがとう。合掌