第206号『ホノルルマラソンの走り方−3』

【稲荷湯】
【稲荷湯】

42.195キロとはどんな数字なのだろう。
歩幅がおよそ、40センチとして、105.000歩。
日本橋から測ると、新横浜、調布、朝霞、流山、船橋あたりまでの距離になる。
ちなみに、高橋尚子が2001年9月30日にベルリンマラソンでだした、2時間19分46秒は女性ランナーとして初めての2時間20分突破の記録である。
2時間20分を切るということは1キロを約3分30秒で駆け抜けることになる。
つまり、100メートルを21秒で420回走り続けたのだ。
冷静に考えると、なんだか気持ちが悪くなってきた。(^^!

いやいや、気分を変えよう。
オリンピックで走るのでもなければ、高橋選手のようになろうというのでもない。
ワイキキの浜辺を、ゆっくりとのんびりと走るのだ。
キラキラと虹色に輝く海原を眺め、きれいなおねいさんの声援を受け、所々にはフラダンスの応援なんぞもある、そんな海岸線を走ってゴールするのだ。と。
(ほとんど妄想ですな・・・)

ともあれ、自分にとって都合が良いように、楽しめるように引き寄せ考え直してみる。
いいぞ、これならなんとなく走れそうな気分になってきた。

人間、50歳も過ぎると、まずはカタチから入るだろう。
カタチが気持ち良いと、コトはより上手くいく。

例えば、酒席。
量を飲めばいいというものでもない。
美しい器に旨い酒と肴があって、語らう友も口数が少ないほうがいい。
例えば、映画。
ハリウッド製の、ジェットコースター的エンタテインメントムービーもいいが、小津の「秋日和」のようなピリリとした笑いのある映画のほうが好きだ。

だから、走るのも、まずは好みに合うウエアとシューズを選んでみる。

あれこれと、試着してみた。
甲高で足幅が広い、典型的日本人の型である。
ナイキでもアディダスでもプーマでもない。
やっぱりアシックスが似合う。
ウエアも勝負の時はアシックスにしよう。
カタチは整った。
あとはどこでどんなふうにトレーニングをするか、である。

灯台下暗し。
これがまた、案配の良いことになっていた。
ある日の夕方、事務所のあるビルに戻ろうと歩いていると、1つビルを挟んだ隣のビルからラン二ング姿の男女が数名どやどやと出て来た。
何事かと聞けば、これから皇居の回りを走るのだと言う。
えっ!と彼らが出て来た先を見ると、そこに「稲荷湯」の暖簾が掛かっている。
なんとそこは、銭湯なのだ。
事務所を神田鍛冶町から、現在の内神田に引っ越してから、もう1年も経つが気づかずにいたことである。

「稲荷湯」は皇居ランニングコースのスタート拠点として、知る人ぞ知るメッカ、聖地なのだ。
この銭湯に荷物を預け、走る。
存分に走った後、ひと風呂浴びて、駅前の居酒屋で冷えたヤツをグビリとやる。
万端相整った。
いよいよ、本当に本当に本当に走るだけとなった。

つづく

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