息子たちがまだ小さな頃、よくキャッチボールをして遊んだ。
あらぬ方向にボールを投げていたのが、徐々に上手くなり、そして、いつの間にか、僕よりも速くなり、遠くへも投げることができるようになった。
それは、子供たちの成長を実感できる、ちょっと嬉しい出来事であった。
キャッチボールは、相手の技量や、背丈に応じてキャッチしやすいように投げなければ続かない。
ただ投げたいように投げているだけなのに、気が付けばなぜか相手のこと考えながら投げている。
そして、投げ終わった後、なんだかホッコリと体と心が温かくなる。
ほんの少し、自分以外の誰かのために思いを巡らしただけなのに。
人のためにほんの少し、考え、行動すること。
僕たちの国は、この、ささやかなことが出来なくなって随分と時が経つ。
いま、この国の大人たちが成す全ての醜悪さは、この、ささやかなことが出来ていないからだ。
今週、試写会で映画『陰日向に咲く』を観た。
登場人物は、みんな不器用で、冴えなくて、カッコ悪くてー。
そして、人を思いやる小さな破片のような気持ちが伝わらず、苦悩する。
しかし、やがて、その想いが一気に繋がっていく。
愛おしさに溢れた群像劇だった。
ひとは、いま、人と人の繋がりを前にも増して、強く求めている。
この試写会ですすり泣く、多くの若い人たちを見て感じた。
『陰日向に咲く』は、明日、26日(土)からロードショーがスタートする。
私事で恐縮だが、倅、川村元気が企画・プロデュースした7作目の興行でもある。