映画ほどではなが、本も好きだ。
ただ、読むのが遅い。
かといって、「速読のすすめ」なる方法で効率よく読むというのも、いま一つ気が進まない。
遅読の理由は、意馬心猿のごとき邪念が跋扈し、集中力が欠落しているからだろう。
ともあれ、ぶらりと本屋に立ち寄ったり、書評でみたり人に薦められたりした折り、買い求め楽しんでいる。
読書後、作品ごとにタイトルや著書名などのデータと、簡単な感想をこれまた映画同様、ノートにとりまとめている。
読んだ70〜80冊の中から今年の私的ベストテンを選んでみた。
1. 「銭金について」 車谷長吉著 朝日文庫
去年、仕事で取材したのがきっかけでこの作家に興味を持ち、著作を読み始めた。
読めば読むほど、観念ではなく自らの身体を有限なものとして切り刻み、ことばを紡ぎ出しているように思えた。
切れ味の鋭い言霊に唸るばかりだ。
2.「荒地の恋」 ねじめ正一著 文春文庫
詩人田村隆一の妻、和子を奪った学友でラバルでもあった北村太郎。
鮎川信夫をはじめその周辺にいた人々を取材し、活写している。
「創造のために何かを突き抜ける」ということは、どういうことなのかを教えてくれた一冊である。
3.「ポジショニング戦略」 アル・ライス/ジャックトラウト著 海と月社
もはや古典である。
丁寧に読むと新たな発見が幾つもある。
その中の1つ、「マルチ・ブランド戦略とは、シングル・ポジション戦略である。」けだし慧眼である。
4.「フリー」 クリス・アンダーソン著 NHK出版
デジタルなものは遅かれ早かれ無料になる。
その通りであるが、ここからどんな展開をすればよいのか・・・である。
5.「ルポ貧困大国アメリカ」 堤未果著 岩波新書
彼岸の危機は、まさしくいまそこにある、私たちの危機でもある。
6.「女塚」 車谷長吉著 文春文庫
本篇もさることながら、三浦雅士氏による解説も秀悦。
「自意識こそが他者なのだ。」と。
7.「プラットフォーム戦略」 平野敦司カール著 東洋経済新報社
なんだかインチキ臭い著者写真であるが(笑)中味は面白い。
そして、いま自分にとって最も関心のあるテーマでもある。
8.「サクリファイス」 近藤史恵著 新潮文庫
かつて、ロードレースに嵌った自転車好きとしてしては、外せない作品である。
それにしても著者はロードレースの世界をまったく知らず、見聞だけで書いたことを知り、作家という魔物を見た気がした。
9.「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を呼んだら」 岩崎夏海著 ダイヤモンド社
この、著作自体がマーケティング的事件でした。
10.「悪人 シナリオ版」 朝日文庫
小説は読んでいたが、シナリオ形式で読むというのは、新たな作品世界に立ち会うようで面白い体験だった。
巻末に原作者吉田修一氏と李相日監督、仁平知世プロデューサー、川村元気プロデューサーによる座談会が収録、映画製作の内側が垣間見える。
残り1ヶ月で何冊読めるか。
目標としている100冊読破には今年も到達しそうにないが、来年も懲りずに再挑戦してみたい。