朝、小1時間ほど、アトリエのベランダに置いてある椅子に腰掛け、本を読む。
海が近いせいか、風もあり部屋にいるより過ごしやすい。
この夏、習慣になったスタイルである。
という案配で、読んだ本の備忘録。
・木皿泉著『昨日のカレー、明日のパン』
なんだか疲れた時、ふと観たくなるTVドラマ『すいか』は、我が家の常備DVDだった。
その脚本を担当したのが木皿泉。
残念ながら、数年前にこのDVDをどなたかに貸したが失念してしいまい、そのまま行方
知れず。
実はご夫婦での共同執筆、そのペンネームが木皿泉。
お二人の初めての小説。
ごくごく普通の、身の回りに起こる出来事や心の機微にこそドラマはある。
怖いくらい見てるな、と、改めて自分と自分の周りを見つめ直した。
そんな、眼差しを感じた一文。
「後輩が得意そうに、ティファニーの銀製のネックレスを見せびらかしていたが、その
彼女の足元が仕事ではきつぶされたサンダルであるのに気づいた時、夕子は、なんて見
すぼらしい世界に自分はいるんだろうと思った。」
・吉村昭著『零式戦闘機』
映画『風立ちぬ』を観て、読みたくなった。
兵器を通して戦争を描いた吉村の作品『戦艦武蔵』同様、読み進めるにつれ、あまりに
悲惨で、なんと愚かしい戦いをしたのだろうと思うばかりである。
どこか未だに、(人的犠牲で成り立つような)日本的組織の根本に息づいている考え方
ではないかと思った一文。
「つまり、防弾装置をほどこすことによって、攻撃力は落ちるのである。軍には、攻撃
こそ最大の防御・・・という根強い兵術的考え方が巣くっていて、それが空戦を目的と
する戦闘機の場合には一層露骨な形となってあらわれていたのである。」
・細田高弘著『未来は言葉でつくらる』
「見たこともない風景には言葉が真っ先にたどり着く」。
書店でパラパラとページを捲っていた時、この一文が飛び込んで来た。
広告の仕事を始める前、ボクは企業のアニュアルレポート(年次報告書)や社内報の制作
に関わっていた。
とりわけ得意先はイオンだった。
当時まだ、ジャスコという社名で業界3、4位あたりに位置していた。
ある時、現CEO 岡田元也氏の父上、岡田卓也社長から、担当部署を通して「イオン」とい
う名の社内報を作るとの指示をいただいた。
まさか、それがいまの社名になるとはつゆ知らずに。
すでにその時、岡田卓也氏の頭のなかには今現在の会社のカタチが思い描かれていたのだ
ろう。
そんなことを思い出しながら読み始めた。
その後、広告の仕事をするようになって、ますます強く確信したことがある。
クリエイティブな言葉は、広告よりも経営にこそ、重要であると。
まさしく、その一文にアンダーラインを引いた。
「広告の仕事を本気で考えるほど、優れた言葉が必要なのは、広告をつくる段階でない
ことに気がつきます。経営者が未来を語る言葉や、開発者が商品を生み出す言葉。それ
ぞれが新鮮な響きを持って、人に新しい可能性を見せるものでなければならない。」
井深大は「ポケットに入るラジオをつくれ」と言い、ウォークマンを生み出した。
ココ・シャネルは「女のからだを自由にする」と宣言し、コルセットから解放し、
ジャージー素材を取り入れた。
スティーブ・ジョブスは「エンジニアじゃなくてアーティスト」と言い放ち、
マッキントッシュをたんに便利なツールではなく、美しい道具に変えた。
さて、ファンサイトはどんな「未来をかたる言葉(宣言)」を持つのか。
「fun is everything」
これからの企業は、お客様との関係を
すべては居心地のいいこと、気持ちのいい方向へと行動する
ファンという、セオリーに従えば結果として、すべてうまくいく
だから、企業はファンとの関係を築く場、ファンサイトが必須なのだ
いままさしく、一行戦略づくりを試行錯誤している。
さて、まだまだ読みたい本も積んである。
Facebookでの遣り取りも楽しいが、気づいた箇所にアンダーラインを引きながら本を
読む楽しさのほうが、少し勝っている。
夏もまだまだ終わりそうにない。
朝の習慣も続きそうである。