雨の朝、ふと、昨年亡くなった父が10月生まれだったことを思い出した。
父は、70歳を過ぎても仕事を続けていた。
腕のいい時計修理の職人だった。
高級腕時計の分解掃除や修理の仕事ができる職人がめっきりと減り、そのた
めか高齢になっても仕事が途絶えることがなかった。
職人にありがちな、普段はあまり感情を露にすることの少ない人だった。
寡黙な父だったが、小さな時計を修理している様は、近寄り難いほどの大き
な熱気と気迫を感じた。
言葉にすれば、挑戦・覚悟・根気・責任・自信・誇り・喜び・・・
その様が、格好良く思えた。
自宅兼仕事場だったこともあり、子どもの頃からそんな父の働く姿を見て育
った。
父は幼い頃から機械いじりが好きで、結果として時計職人になった。
好きなことを仕事にした人である。
だからなのか、ボクにも好きなことを仕事するのが一番だと言ってくれた。
いま、ボクも好きなことを仕事にしている。
ONもOFFもない。
すべてが仕事であり遊びである。
少し大袈裟に言えば、人生を賭けて仕事を楽しんでいる。
そうしていると、必然的に楽しい仲間と出会う。
そして、楽しい仕事が生まれる。
もちろん、その過程でもがき苦しむこともある。
それも含めての、仕事の面白さだ。
気がつけば、ボクも父と同じように倅に好きなことを仕事にするよう進言し
てきた。
その倅が、『仕事。』という書籍を上梓した。
果たして、その中身はいかに・・・。
『仕事。』川村元気著 集英社刊
ご高覧いただければ幸甚である。