【回る風車】
昨年に続き、今年も企業研修セミナーの講師をお引け受けした。
この他にも、大学と専門学校での授業もしている。
自問自答することがある。
何かを伝え、教えるということは何か。
師弟関係を持つとはどんなことなのか、と。
自らも大学教授の職にあった内田樹氏の著書『下流志向』のなかで師弟関係について、
なるほどと得心したので紹介したい。
いきなり禅問答のようであるが「師であることの条件」は「師を持っている」ことだと
断言している。
つまり、人の師たることのできる唯一の条件はその人もまた誰かの弟子であったことが
るということ。
弟子として師に仕え、自分の脳力を無限に超える存在とつながっているという感覚を持
ったことがある人だと。
それは、無限に続く流れの中の、一つの環であり、長い鎖の中のただ一つの環にすぎな
いけれど、自分がいなければ、その鎖はとぎれてしまうという、そういう自覚と使命感
を持っていることが師として唯一の条件である。
ボクはこのような内田樹氏の意見に、全面的に賛成する。
さらに、映画『スター・ウォーズ』のエピソードからこの事例について言及している。
ジェダイの騎士のメンターであるオビ=ワン・ケノービよりも弟子であるアナキン・スカ
イウォーカーが強くなる。
彼は連綿と続くジェダイの騎士の環から離れ、カリスマとしてフォースのダークサイドの
側に立った。
ところが、カリスマとしてさらに力を得たはずなのに、最後は師のオビ=ワン・ケノービ
と対決し負ける。
なんとも象徴的な話しである。
余談であるが、ジョージ・ルーカス監督が師と仰ぐ黒澤明監督作品『姿三四郎』が『スタ
ー・ウォーズ』の元ネタである。
再び問う。
何かを伝え、教えることとは何か。
ボクは師の柏木博からデザインの歴史と作法を学んだ。
そして、故宇田一夫からマーケティングと酒を学んだ。
二人の師に共通するものは、継続性とその背後にはある道義性だ。
道義性とは、物事の公正さと明るい可能性を信じることのできる精神のことである。
ボクも面々とつながり続ける鎖の環の一つとして、次の世代に繋いでいけたらと、願って
いる。