【あじさいの季節】
2つ程、夏前には動き出すはずの新規プロジェクトが止まったままだ。
動かない原因はどこにあるのかと考えているうちに、自分の欠点ばかりが目についてくる。
なぜ、スパっと仕切れないのか。
まるで、鈍った刀のような己の能力のなさを恨めしく思う。
当然、当てにしていた資金運用もとたんに苦しくなる。
息苦しい気分になってくる。
弱小零細ゆえの悩みでもある。
でも、簡単には折れない。
これまでも、幾多の強風や荒波を凌いできた故の強さもある。
状況は刻々と変わる。
だから、こんな時は、あまりジタバタせず自分磨きをするに限る。
例えば、手をつけていなかった本を読む。
例えば、使っていない衣類や古いハウツー本を処分する。
例えば、紺屋の白袴状態の自社サイトを見直してみる。
例えば、仕舞い込んでいた企画を引っ張りだし、提案できるものに仕上げる。
例えば、社員一人ひとりとじっくりと話をする。
例えば、少し疎遠になっていた仲間に声を掛け、酒を飲み交わす。
例えば、坂村真民の詩『鈍刀を磨く』を声に出して読んでみる。
『鈍刀を磨く』
鈍刀をいくら磨いても
無駄なことだというが
何もそんなことばに
耳を貸す必要はない
せっせと磨くのだ
刀は光らないかも知れないが
磨く本人が変わってくる
つまり刀がすまぬすまぬと言いながら
磨く本人を光るものにしてくれるのだ
そこが深甚微妙の世界だ
だからせっせと磨くのだ
坂村 真民 著『詩集 念ずれば花ひらく』より
ボクは深呼吸をし、もう一度ゆっくりと読み返してみた。