第66号『真似る』

ミスターKと呼ばれた男が変わった。

彼が、22日登板した対ロッキーズ戦のことである。
この試合、三振わずかに2個。
かつてのピッチングを知るものにとっては驚きである。

95年ドジャーズ入団、この年奪三振236、一試合平均8.4個の三振を奪っている。
96年は234奪三振、97年は233奪三振、一試合平均いずれも7個以上である。

この試合、凡打で打ち取る数が目立って増えているのである。
初回、先頭から3安打で1点を失う。
この3連打された球はいずれもフォークボールだった。
彼は自問自答した。
「なぜだ。」
「そうか、フォークが狙われている。」 だから2回以降、速球主体の投球に変えた。

フォークを待つバッターにとって速球は振り遅れる。
しかし、残念ながらいまの彼にはかつてほどのスピードと威力のある球はない。
バッターにとって当てることは困難ではない。
結果、凡打の山を築き、三振が少なくなった。

肉体的な衰えを補う知力と洞察力で今期11勝、これで2001年レッドソックス時代から大リーグで3年連続の二桁の勝ち星、これはまさしく偉業である。
恐らく、来期は日本人としてはじめての9ミリオン(11億円)プレイヤーが誕生することになる。

ファン心理というやつであろうか、騒がれすぎるのも厭だが、松井やイチローばかりの報道にも首をかしげる。
この偉大なアスリート、野茂英雄はもっと賞賛されて然るべきだ。
こうして、野茂は進化し変化し続けている。

正直なところ、今年8月のトライアスロン出場を迷っていた。
泳ぐ、漕ぐ、走る。
この、きわめてシンプルな動作を連続する競技に参加するリスクを考えていた。
5月に山中湖マラソンに参加してからトレーニングらしいトレーニングができていない。
打ち合わせや友人たちとの食事の機会が多く、お調子者の性なのか、ついつい飲み且つ食い、語らう。
気が付くと、酒も肴も腹いっぱいいただいている。

無自覚なものには結果だけが待っている。
結果、4ヶ月で4キロほど体重が増えた。(ワオー!?)

少し練習すればもとの体重と運動機能を取り戻せると2、3日前まで考えていた。
だが、それほど事態は甘くはない。

久しぶりに軽く走ってみた。
体がすこぶる重い。
恐らく、このままでは完走するどころか身体機能に問題が生ずる。
例えばそれがほんのささやかなレースであってもだ。
危険である。
止めるか。

去年は左足脹脛の肉離れで出場ができなかった。
今年参加しなければもうトライアスロンは自分にとって終わりかなと思った。

そんなことを漠然と考えていた時、野茂のニュースを見た。
そして、もう少し続けてみようと思った。
はたしてレースが出来る体に再生することができるかどうかわからない。
でも、いまぼくは野茂を見習い、もう一度進化し、変化してみようと思う。
「学ぶは真似る」ことでもあるのだから。

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