【映画パンフレット】
先日、映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を観た。
海辺の町の少年少女たちの夏休み。
花火大会の日、クラスのアイドル、なずなが母親の再婚のため転校すること
になった。
なずなに思いを寄せる典道は、転校をしたくない彼女から「かけおち」に誘
われ、時間が巻き戻る不思議な体験をする。
本作は1993年にTV放送され、95年に劇場公開もされた原作者岩井俊二監督
作品を、「モテキ」「バクマン。」の大根仁による脚本、「電車男」「悪人」
「君の名は、」の川村元気が企画・プロデュース(余談だが20年以上前、
「打ち上げ花火・・・」を日曜日の昼下がり、自宅の居間で倅と観ていたこ
とを思い出した)「魔法少女まどか☆マギカ」の新房昭之総監督でのアニメ
映画作品である。
映画を観終わって、ふと、中学生時代のことが蘇った。
中学校1年の夏、九州小倉からYさんが転校してきた。
スラリと背が高く、面長な顔立ちがきれいな少女だった。
口数は少なく、とても成績もよかった。
時々、ぽろりともれる九州小倉弁が子供心にも異邦人のような魅力があり、
容姿と相まって、どこか大人びたものを感じていた。
そんなYさんが、どんなところに住んでいるのか気になり(どうやって知っ
たのかは忘れたが)、こっそりと見に行った。
住所を辿っていくと、駅裏の線路脇に数店並ぶ飲み屋街の一軒がそれだった。
なにか、見てはいけないものを見てしまったような気がした。
そして、苦くザラリとした後味が口の中に広がった。
(いま思えば、映画で観た艶めかしい大人が内在している主人公、なずなの
姿と重なる。なるほど、すこし大人でエロな少女の表現が上手い新房昭之監
督の起用は、ある意味正しい)それから1年が経ち、2年の夏、彼女は北海道
へ転校してしまった。
あの少年の日々の思い出は、もはやどこにも痕跡としては存在はしないけれど、
確かにいまもある。
映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(奥菜恵主演)は、
岩井俊二監督によって95年に製作された佳作である。
僕はそれを(リアルタイムで)観ている。
ただ、今回のアニメ版と実写版を並列に比較して語ることに、あまり意味は
ないと思っている。
役者の身体や声といったリアルさを伴う実写版の良さはもちろんあるが、片
やアニメだからこそ可能になった表現や音の広がりに目を向けるのも楽しい。
そうした意味で、この作品は2017年版の映画『打ち上げ花火、下から見るか?
横から見るか?』(子どもから大人へと脱皮していく普遍性は担保しながら、
いまどきの少年少女の気分を体現している映画)として観ることができるので
はないか。
それから、もう1つ。
今回の映画主題歌はDAOKOと米津玄師による「打上花火」。
なんとも気持ちのよい楽曲だ。
観終わった後も、耳の奥でリフレィンして離れない。