第876号『月末の恒例行事』

【路地裏に咲いていたサボテン】

月末は、銀行での支払い業務が恒例行事である。
会計担当の妻が支払い一覧表を前日までに作り、僕がそれをチックし、さらに入金予定の会社様とその金額も合わせて確認する。
当日は、支払い一覧や通帳、その他税金などの支払通知書を確認し袋に詰める。
取引をしている銀行の支店が住まいの近くになく、妻と一緒に3駅ほど移動する。
数年前までは、ネットバンキングで処理していたこともあったが、ハッキングされそうになったこと(実害はなかった)があり、怖い思いをしたのでやめた。
そんなことがあって、出かける時間もかかるし、ATMでの振込作業も煩雑ではあるが、いまのところ超アナログなこの振込作業がいちばん安心できる方法とおもい処している。
加えて、窓口で各種税金や公共料金などの支払いと、なんだかんだ小一時間は銀行でバタバタする。

振込金額の間違いがないように、妻とダブルチェックをしながら作業を進めるのだが、緊張もするし神経も使う。
もちろん、後ろの列の視線も気にかかる。
そして、背中にじわりと汗が滲む。

毎回のことだが、この一連の事柄を終え、銀行から出てくると「ふー」と大きく深呼吸をしてしまう。
かたわらにいる妻と顔を見合わせ、「今回もご苦労様でした」と、言葉が自然に口をついて出てくる。

これほど難儀でも、ATMでのアナログな振込は悪くないなと思っている。
もちろん、ハッキングが怖いということはあるが、それとは別に確認できることがあるからだ。

ファンサイトは吹けば飛ぶような会社ではあるが、それでも毎回十数社、十数名の方々にお支払いさせていただいている。
それは、取りも直さず、一緒に仕事を分かち合い、プロジェクトを完成させたことにより、共に成し遂げた成果を分かち合うことが出来たという証である。
こうした仲間がいるからこそ、ファンサイトは成り立っている。
この実感をいちばん感じるのが、月末の支払いの時である。

支払いが終わり、気がつけばお昼を過ぎている。
ホッとすると、お腹もなんだか急に空く。
これも月末の恒例行事だが、商店街の中ほどにある行きつけの食堂の暖簾を潜る。
10人も入れば一杯の店だが、安くて美味いから、昼過ぎでも結構混んでいる。
店の前で少し待って、席に案内された。
席に着くやいなや、まずは両手をアルコール消毒される。
テーブルは飛沫防止の衝立があり、こんな小さなお店でもコロナ対策がきちんとされている。
本当に、真剣に、真面目に、商いに取り組んでいるんだなと思う。
兎も角も、自分たちができることをきちんと精一杯実行している。

この日、妻は刺身定食を注文し、僕は海鮮ちらし丼を注文した。
ここで、ビールといきたいところだが、午後の仕事もある。
グッとこらえ、晩酌までのお楽しみに取っておくことにした。