第11回 さわらぬ神に祟りなし

七里ヶ浜
七里ヶ浜

数年前に読んだ雑誌に、
「フランスに居住するイスラム教徒の約7割は、
家族の遺体を北アフリカの故国に埋葬することを希望している。」と書いてありました。
そのため、北アフリカにむかう旅客機の貨物室には、遺体が数体乗せられているそうです。

というのも、フランスにはイスラム教徒が納得いく墓地が少ないという事情があるとのこと。
政教分離により、自治体が管理する墓地には、
特定の信者に配慮した区画を作ることが許されないそうで、
さらに、一度埋葬したら遺体を動かすことを好まないイスラム教徒は、
30~50年間の期間が過ぎたら、遺体を共同墓地に移すこの国の慣習にもなじまないとのこと。

1月7日に発生した政治週刊紙「シャルリー・エブド」銃撃事件。
亡くなった12人、パリの路上で射殺された女性警官、
そしてユダヤ系食料品店立てこもり事件で殺害された4人の人質を悼み行われた集会は、
フランス全土でデモ参加者を合わせるとその数370万人超と報じられています。

フランス史上最大規模の抗議活動となった、1月11日のこの集会に、
イギリスのキャメロン首相、ドイツのメルケル首相、スペインのラホイ首相、
イスラエルのネタニヤフ首相等々、著名な方々の出席に、正直僕は驚きました。
殺害された方々を悼み、テロ攻撃に屈しない姿勢を示す強い姿勢を感じましたし、
ここまで大きな問題だったのか、と改めて実感せざるを得ませんでした。
表現の自由に対する思いの強さ、思想や宗教に対する思慮深さ。
恥ずかしい話かもしれませんが、僕にはここまでの執着のようなものはありませんでした。

ふと、自由・平等・博愛の国での、冒頭の雑誌の記事を思い出しました。
数年前に読んだときには、貨物室に遺体が乗せられているという事実に関心を持ちましたが、
なるほど、移民国家で様々な民族や習慣、文化がまざることの難しさが書かれていたのです。
今回の事件で改めて信仰や表現がかかえる問題、民族間の問題を思い知らされました。

単一民族で、アンケートで信仰を持っている国民が約2割の国で育った僕らには、
完全に理解することは難しいですが、このような事に関心を持ち始めている自分がいます。
「さわらぬ神に祟りなし」ではなく、きれいごとではなく、
少しずつ、他の民族や思想の歴史に関心を持ち、理解や共感を示し、
人生をおくれるような、大人になりたいものです。

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