第18回 スタイル

サポーター
サポーター

ボールも人も動くサッカー。
ムービングフットボールと言われるサッカーの戦術のひとつは、
フリーランニングやポジションチェンジを繰り返して、ボールを動かし、
動いたボールに連動して、また人が動き・・・連動することで数的有利を創りだし、
突出した点取り屋がいなくても点をとれる、といわれる日本代表も目指したスタイルです。

ボールを求めて人が動くことに原始的な喜びを感じるのは、僕だけではないはずで、
この季節、全国各地でキックオフを告げる笛と歓声に多くの人の心が高揚されるのです。

欧州どこの国に行ってもパブでもビジネスシーンでもフットボールを語ると、
「つかみはOK」になるのですが、
サッカー後進国の日本ではまだそのようなケースはあまりありません。
それでも、地方都市で開催されるゲーム観戦に行けば、
各地方に根付き始めているホームタウン意識を否が応にも感じるのです。

まだフットボールそのもののスタイルや哲学が全てのチームに根付いているわけではなく、
専門家が本質論を語れば、Jリーグには、鹿島アントラーズ以外、
「スタイル」を築いているチームがないとのことですが、
100年構想を掲げたJリーグの哲学(~スポーツでもっと幸せな国へ)を否定する人は、
もはや皆無でしょう。

さて、その「スタイル」。
Jリーグの開幕戦、柏レイソル対ヴィッセル神戸の試合観戦をしていて、
ディフェンスラインと中盤が、昨年と異なり自信にみちてプレーしているレイソルに、
チームとしてのスタイルを感じずにはいられませんでした。
素人目にもわかるその自信あるプレーぶりは、
「自分たちのスタイルを築いていこう」というベクトル表示を感じるものでした。

調べてみると、レイソルの吉田達磨監督は、独自の哲学をもとに攻撃的スタイルを打ち出し、
チーム下部組織の指導者時代に、才能豊かな選手をプロとして多く輩出しております。
のみならず、この才能豊かなゴールデンエイジが彼の哲学を具現化し、
そのチームが、数多くの勝利と国際的な高評価をも得るのです。
この評価から、組織全体のコンセプトが一貫化され、世代をまたがり共通した哲学のもとに、
ひとつの同じスタイルを表現する「組織」が構築されていったそうです。

やがて、チームは、吉田監督を3~4年前から監督にするということを前提に、
クラブの様々な重要なポジションを任せました。
過去見せた監督の手腕や功績を評価して、数年かけ、監督人事をおこなったのです。

何がきっかけだったのか、偶然故か、必然だったかいざしらず、
ひとつのスタイルを目指して、組織が継続して道標をしめすということは、
そこにいるヒトにも自信を与えるし、誰にも迷いがなくなると思います。
そして、それがさらに継続することで、いつしかそれは「ブランド」になるのです。
「自他ともに認める」もの、「関わるすべての人との約束」が、ブランドであり、
それは単なる色やロゴマークではないと、僕は教わりました。
ブランドが本当に成熟するには時間を要するということです。

ブランドの立ち上げを目にしたような気分になったこの日、
ふと残念に思ったのは、たった17試合でステージ優勝を決めてしまうという
今シーズンのレギュレーションです。
1年間通した継続した実力をぜひ競ってほしかったと今でも思います。
それでも「これは100分の1年の出来事なのだ」と割り切り、家路につくのでした。

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