第26回 ご縁

Lloyd
Lloyd

運と縁。
よく聞くキーワードですね。最近メンターっぽい人が良く使うコトバだと思います。
要するに、世の中は「運と縁」で成り立っていて、その両方とも大切で、
それぞれ偶然に左右される要素で構成されていると思われがちでも
自らの行動や準備や心の持ち方で大きく変わり、自らの人生に大きく影響を与えると。
そのように、指導者たちが、競って使っているキーワードです。

なるほど縁とは不思議なもので、
人的な関係でいえば、ある人とない人がいるなと思わざるを得ません。

連休明けの週末、野暮用で母校のキャンパスを訪れたら、
駅からキャンパスまでわたる横断歩道で同級生にバッタリ。
その帰りの東急東横線で、勤めていたときにお世話になった上司にバッタリ。
世代や居所、趣味嗜好が近ければ、なんとなく行動も似通って、縁も増えると思いますが、
写真のナイスガイは、そのような要素がまったくない人物です。

通称Lloyd。
最初の出会いは10年前。
銀座の並木通りで、深夜にキーボードを抱えてドッカリと道に腰をおろしていたので、
具合でも悪いかと思い、僕から声をかけたのです。
そのときは、特に具合悪いわけでもなく、日本特有の夏の湿気にやられていたようで、
「大丈夫だよ。」って笑って別れたのですが、数年後、とあるBARで偶然に会いました。
彼は、そこでピアノを弾き語っていたのです。要するに「流し」のピアニストですね。
偶然の再会に気をよくして、僕のおごりで数杯飲んだのを記憶しています。
しばらくそこには通いましたが、やがて行かなくなり彼とは疎遠に。
住んでいる所も年齢も国籍も知らないのに(僕は日本人として認識されていますが)、
疎遠もなにもないのですが、以来数年会うことはありませんでした。

土曜日の夜。ちょうど昼間、同級生と元上司に出くわしたその夜です。
仕事上のスランプの鬱憤晴らしと5月病の治療と諸々を兼ねて訪れたラウンジで
聞いたことのある、決して一流でない歌声を久しぶりに耳にしました。
思わずグランドピアノに歩み寄った僕に、曲の最中にもかかわらず、
握手を求めてきた彼は以前とかわらない笑顔でした。
「ちゃんと弾け。」と思いながらも、厚みのある手を握り返し、心が晴れるのでした。

「縁」は、向上的な機会なでもなく、ビジネスチャンスでもないのでしょう。
国籍や年齢や性別、宗教など、そういった属性的要素と関係なく、意思とも関係なく、
めぐりあう人との出会いだと、僕は考えます。
深まれば、長く続いたり、場合によっては一緒に住んだり、
逆に、気があって利害が一致する関係でも、都合やリズムが合わない人達もいます。
育った環境や時代、仕事や趣味嗜好も関係なく、なんとなく巡りあうものなのではないかと。

“What’s going on” を再会の記念に歌ってくれた彼に聞きました。
「僕らのような関係をなんて表現すればよいの?」
しばらくして彼は答えました。
“GODSEND”
意味はよくわかりませんが、考えていることは同じなのかなと妙に納得し、
足取りも軽く、鼻唄まじりで家路につくのでした。
Mother mother ~

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