第3回 黒田バズーカ

ロシア上空の夕陽
ロシア上空の夕陽

日銀追加緩和は市場では大きなサプライズとなり、
黒田総裁は「GPIFの投資政策と金融政策は直接関係ない」と述べていましたが、
明らかに、事前に計画されていたものだったようで、
日銀とGPIFの合わせ技により増税より先に手を打ち、まさに総力戦の様相です。

追加緩和発表後に円安が進行し、株価も上昇したことで、
輸入物価上昇による物価押し上げや、
マインド効果による消費への刺激も期待できるというものですが、
はたしてそうなのでしょうか?

黒田総裁の会見では物価へのこだわりが印象的でしたが、
物価が上昇しても経済が一向に回復しなければ賃金は上がらず、
国内消費者にとっては重い負担となります。
その「間」を埋めるはずの実体経済の回復は未だ何も見えてきてはいません。
日本国内で小売店舗をいくつか手がけ、苦楽もともにしている僕には、
実感として、そのことがとてもよくわかるのです。
高齢化する日本社会において、大幅なインフレは訪れ得ません。
既に何でも揃い、何不自由なく過ごせ、新たな内需もなかなか創造し得ません。

賃金の持続的上昇は見込めないことがはっきりしている状況で、
日本の厳しい将来を予感した僕は、2010年から海外に挑戦の場を求めるようになりました。
当初は東南アジア諸国で…失敗に次ぐ失敗を重ね、個人的な国際競争力のなさを実感し、
それでも、機会があるたびに、海外に目を向けてきました。

いま、縁あって東欧の地で、ある企業のお手伝いをしております。
少しずつですがいろいろな経験が形になりつつあり、ほんの少し自信も芽生えています。
10時間以内ならエコノミーでの移動も、2泊程度ならパブでの仮眠も苦になりません。
何より、学歴、職歴でも家柄でもなく、個の力を評価してくれる環境を心地よく思います。

市場において「バズーカ」の異名にふさわしいインパクトをみせている追加緩和ですが、
その分、歪みや反動が大きくなるおそれもあります。
そのような武器を使わずに、個の力の結集で局面を打開できるようになりたいものです。
われわれの両親の世代がそうだったように。

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