第62回 振り向くな君は美しい

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 年は明け、2017年。久しぶりに正月休みに足を運んだ全国高校サッカー選手権。
Jリーグチームに入団内定しているお目当ての選手を見に行くことだけが、その目的だったのですが、目の当たりにする真剣勝負に、年始からいくつものことを考えさせられるのでした。

 周知の通り、トッププロが存在する類のスポーツ界では、高校3年間という時期は、極めて重要な育成期間にあたります。その大切な時期に、トッププロを志す選手が、そうではない選手が多数をしめる環境で、「大活躍」をする意義がどれだけあるのだろうかという思いで、ゲーム前半を観戦していました。
 世界に目を向ければ、10代選手が最高峰の舞台で活躍し、その舞台を目指す切磋琢磨が日常になり、彼らをとりまく環境となっているわけですから、そうではない環境で思春期を過ごす将来の日本代表選手が、彼らに追いつき追い越すのはなかなか難しいと思えるのです。どのようにして将来同じピッチで一戦まじえる準備をすればよいのでしょうか。

 試合の大勢が決し前半を終了すると、リードを奪われているチームの選手たちはピッチに一礼をして、ベンチに戻っていきます。懐かしい風景でした。彼らはすべてのゲームでこのようにふるまっているのでしょう。勝っている試合もそうでない試合もボールを蹴れる日常に感謝してグランドにお辞儀をするのでしょう。あるいはそう教えられているのでしょう。後半になってもゲームのモメンタムは変わらず、前半に一礼してピッチをあとにした選手たちは、敗者として勝敗という結果がつきまとう現実を受け入れているように見えました。
 アスリートとしての育成時期は、同時に素晴らしい仲間と人生をともに過ごし学ぶ時期でもあり、学校教育の一環としてのスポーツという環境に身を置くことも否定できないと、あらためて思わされるのでした。

 酉年にちなんで、「鳥の目を。」「俯瞰して物事を見よ。」といった広い視野をもてというメッセージの賀詞交換の挨拶が多いなか、おそらくサッカーしかやってきていないであろう視野の狭い高校生たちの熱戦は僕の心に一石を投じてくれました。ひとつのことに没頭する素晴らしさ、そこから多くのことを学べるということを思い出させてくれたのです。真理を追求することや極めることはどの世界においても違いはないということです。もっと言えば、スポーツも勉強も仕事も遊びも一道なのでしょう。都度、様々な結果はつきまとうものです。でも変わらない本質を見極めること、追い求めることが、いつのときも大切なのでしょう。
 得点王を逃した彼が、仲間たちの思いや先生からの教えを胸に、世界で戦う日を祈念して、2017年をスタートします。

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