第68回 夜明けのブレス

 都議会選で自民党が惨敗し、竜王戦で藤井四段が30連勝を阻まれ、折り返しをむかえたJ2リーグではジェフ千葉が初の連勝をはたしました。あらゆるシーンで人生には勝ち負けがあり、好むと好まざると結果を受け入れなければなりません。もちろん結果にこだわらない生き方もできますが、どうせやるなら勝ちたいですし、同じ船にのる同志なら、一緒に結果を求める人生を歩みたいものです。それが個であってもチームであっても結果を求めるから、そこに喜怒哀楽があり、物語があるのだと僕は思います。ただ勝利することはそう簡単ではありません。

 そして勝つことを習慣化していくことは、単純に勝利することからもう一段難しい作業が加わるような気がしています。勝ち「続ける」ことが難しいということです。それは無論スポーツ界に限ったことではありません。
 先日、設立11周年をむかえた会社の設立記念パーティーに出席しました。ほんの数年前までボードメンバーだけで売上をつくるよく見かけるような中小企業だった組織が、わずか数十名で数十億の売上を計上し増収し続ける姿を見て、続けることの偉大さを感じたのです。

 そのパーティーでは、各個人に向けて年間の功績を讃える表彰の場が設けられ受賞者が必ず一言を述べるのですが、結婚披露宴に招かれた親族さながらに毎度涙を誘われる僕は、今回もある女性職員の一言に涙腺が緩みました。「心を決めることが大切。『やる』と心決めることが。」と胸中を語った彼女は覚悟というものが何であるかを語っていました。おそらく日々の仕事の中で組織からそれを学び実践し続けてきたのでしょう。やがてその覚悟が組織のDNAになっていくに違いありません。

 常勝する組織は、勝利者のメンタリティを持つ強い個があること、その個が組織の中でしのぎを削って競い合っていること、そこから相互を認めて信頼しあいチームワークが生まれること、このような要素でおそらく成り立っているのであろうとあらためて認識させられた夜でした。
 宴が、夜明けまで続いたかどうかはわかりません。ただ次のステージへ新たな一歩を力強く踏み出したことは間違いないでしょう。連勝を止められた棋士が新しい勝利を目指すように、初の連勝を契機に情熱のチームが後半戦に備えるように、それぞれの朝はやってきて、道のりは続きます。新橋の居酒屋で夜更けまで上司や組織の愚痴を口にしている場合ではありません。

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