第25回 草の根運動

東大農学部グラウンド
東大農学部グラウンド

FIFAも注目する日本サッカーの躍進は、
お父さんサンデーコーチが、昭和50年代から少年団で子供たちを教え、
その子たちが見る目をもち、先進国から色々な情報を集め、
その次の世代の育成した継続の賜物と言われています。

いわゆる「草の根運動」。
支配層でなく被支配層が横のつながりで連帯・連携しておこなう社会運動のスローガン。
マイノリティが、やがてマジョリティになる過程の裾野で展開される運動を
なんとなく指し示しているように、僕は解釈しています。

日本に戻ってきて、球蹴りに夢中になっていた幼少時、
毎週土曜日に、テレビ東京で30分だけ放映される三菱ダイヤモンドサッカーに虜になり、
翌日にはみんながケニーダルグリッシュになってゴールを狙いました。
「サッカーを愛する皆さんご機嫌いかがでしょうか。」
というオープニングコメントが印象に残るこの番組もまさに「草の根運動」、
当時まだ競技人口も少なく、決してメジャースポーツでなかった
40年以上前から日本サッカーの黎明期を支えていたのですね。

そのような幼い頃の記憶を呼び起こさせるような試合観戦をしてきました。
東京都社会人リーグの一戦。

スタンド以外から久しぶりにフットボールに触れ、
選手間の掛け声やベンチワーク、Jリーガー顔負けの球際の激しさを堪能し、
元気をもらったこのゲーム。
選手の方は、文字通り社会人が多数をしめ、立派に仕事をしながら、
練習や試合のときには、大好きなフットボールに夢中になるのです。

彼らは「大好き」という唯一最高の原動力で、ボールを追いかけ、汗を流し、
結果として何らかの形で日本サッカー界に携わり、
メジャースポーツになった今も日本サッカーの裾野で活躍をしています。

「草の根」を表す「Grass Roots」は直訳すれば農業地区です。
末端、基礎なんていう意味もあり、派生して「有権者」という意味にもなるとのこと。
19世紀のアメリカはゴールドラッシュで、
草の良く茂った山脈の土壌に金が隠れていると噂され、
草の根が末端の「民意」を表すようになったそうです。

小さな意思が集まって、やがてムーブメントを起こし、
世代をこえて伝えられていくと揺るぎない力に育っていくのだなと、
照りつける初夏の日差しの中、つくづく感じました。
根付くのには時間を要し、また一度根を張れば、それは強固なものになるわけです。

独立戦争もフランス革命も経験していない僕たち日本人が
「民意」の真の意味を理解するまで、もう少し時間がかかるでしょう。
ゴールデンウィークがやってきます。5月3日は憲法記念日です。

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