ギリシャが世界を揺るがす一週間。
自分がギリシャ国民だったらどんな気持ちだろうと考えていました。
ある日突然、銀行での引出限度額が1日あたり60ユーロになり、
国民投票を外交の手段に利用され、近隣諸国から白眼視され、
競争することを教育されず、新しいモラルの中で競争を強いられる。
これが数々の報道からの僕のギリシャに対する印象です。
考えてみれば、これだけボーダレスの時代になれば、
生活する場所も自らの意思で容易に選択できるような気がします。
少しの努力や運と縁を手繰り、国家などの従来の境界線をこえて
理想とする環境を手に入れることが、従来と比べ容易にできるのです。
生まれた国で一生を過ごすという概念の時代から、
所属する国を選択できるという概念の時代になっているのではないでしょうか。
政治不信のため、自らを統治する国家を変更できるということです。
ギリシャに生まれても他の国の国民になることもできるという意味です。
国家が国民を統治できなくなってきていると言えば言い過ぎでしょうか。
一方、グローバルプラットフォームを支配する企業は、
まさにボーダレスで人を統治していくことが可能になっています。
アップル、グーグル、アマゾン・・・。
彼らが本気をだしたら、市場を一瞬で消すことが可能です。
マイクロソフトがネットスケープや一太郎、ロータスを倒してきた歴史がそれです。
彼らは市場の支配者であり、大袈裟に言えば、世の中の支配者です。
破格の福利厚生で優秀な人材を集め、市場の支配を加速させていくのです。
所属するスタッフは、一様にその組織に帰属していることに誇りを持っています。
「ゴルドマナイト」と呼ばれるゴールドマンサックス社の社員は、
超エリート集団の中で働くチャンスを得た喜びと、
自分もそこに属する一人であるという自負があるそうです。
ミッドタウンに住むことができるのは、日本に生まれてきたからではなく、
ゴールドマンの社員であるからだと、思っているはずです。
帰属意識や理念、アイデンティティという面において、
国家という概念が人々の中で非常に希薄になり、それにかわって、
優良企業や名門校が、その対象に、よりなってきているのではないでしょうか。
企業広告がいたるところにある成田空港にて、ふと自国について考えるのでした。
幸いなことに、日本国のパスポートは、
先人のおかげで、世界でも有数の信用の証になっています。
僕たちは、この時代この国に生まれてきたおかげで、
餓死や戦争を経験しないで、平和に過ごせています。
ただ、今後、集団的自衛権だけでは国は護れないでしょうし、
インバウンドの免税店利用頼りでは経済発展はないでしょう。
国家という単位で、グローバルプラットフォーム企業のブランディングに、
学ぶべきところが多いのではないでしょうか。
帰属する者に、「この企業に入社したい。」、「この出身校に誇りをもっている。」、
「この会社をやめたくない。」、と思わせるのも、ブランディングの力です。
時間をかけて丁寧に、国民であることに誇りを持たせること、
この国に住めて幸福であると思わせること、多くの税金を払いたいと思わせること、
そのようなことが、「苔の生すまで」永続的に発展することに繋がるのでしょう。
いつもより日本人であることを意識しながら、
ギリシャのおかげで安くなったユーロに気をよくして、出国のゲートをくぐるのでした。