第36回 寒い夏

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それにしても暑いですね。
日本全国各地で猛暑のニュースが流れ、熱中症の注意喚起が止まない夏です。
子供たちは夏休み。
海や川での水難事故も相次ぎ、楽しいことの裏側で色々な意味での注意が必要です。

茹だるような暑さの中、汗をぬぐいながら歩いていると、
既に死語になりつつある「コンクリートジャングル」が、
本当に熱帯雨林のように感じられる人も少なくないのかと思います。

僕は、超クールビズで過ごしているため、
冷房の効きすぎた電車の中やオフィスに比べ、ジャングルの方が心地よいのですが、
噴き出る汗のために、替えのシャツを数枚持ち歩いて過ごしている毎日です。
東日本大震災のおきた年の夏は、どこも自粛ムードで、エアコンもほどほどに、
節電したり、キャンドルだけで一晩語り明かしたり、
国民全体がそのような意識で過ごしていた気がしています。

やはり、「喉元過ぎれば…」なのでしょう。
つい数年前の意識もなかなか維持できないのが、人間なのでしょうか、
今や、あのときの自意識はどこにもなく、ネオンは煌々と、
JRは冷凍車のような客車を走らせ、
どのオフィスもどの飲食店も遠慮なくクーラーでお客様をもてなしています。
高い意識を保ち続けるのは、なかなか大変なのだなと思います。

油断していると、いわゆる冷房病にかかってしまうので、
替えのシャツと一緒に必ずパーカーなどの長袖を持ち歩くのですが、
めまいがするような冷えた車輛や店舗には、エコなどという高尚な観点からでなく、
素朴に「やりすぎじゃないかな。」と思うのです。

過ぎたるは猶及ばざるが如し。
ことあるごとに、この言葉を思い出しますが、
熱中症の注意喚起が止まない夏に、防寒対策を常に意識しないとならないのは、
この言葉の通りですし、非常に面倒なことです。

銀座の再開発が、すべて大型商業施設の建設でなくてよいでしょうし、
国立競技場の工費は2,500億円も必要ないでしょう。
立ち食いで、高級食材を安く食しないでも、美味しい料理は他にもあります。
皆、「やりすぎ」です。

そして、夏は暑くてよいのではないでしょうか。

そもそも、せっかくの季節をコントロールしようとすること自体、
ナンセンスなのではないのかな、と思ってしまうのです。
何事もコントロールせず、うまくつきあってみることも試したいものです。
籐や竹でできた筵を敷き、軒に風鈴、大事に育てた朝顔や紫陽花。
日中は打ち水、夕方は表に出て近所の人たちと一緒に夕涼み。
昔の人の工夫を少しでも真似てみると、うまく季節とつきあえる気がします。

デスクワークはしづらく、外訪は汗にまみれる日々ですが、
先人は、扇子の扇ぎ方ひとつで、優雅に涼やかに相手に思わせたとのことです。
この暑さから、気配りを学べるのですね。日本人のセンスです。

そうでなくても、暑くて仕事にならないのであれば、
仕事を早めに終わらせて、暑気払いに繰り出しましょう。
寒い夏は、必要ありません。

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