第55回 有事

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戦争や事変など、非常の事態が起こることを意味します。
ここのところの世界経済は、ブリグジット(=Brexit)で揺れており、
まさに有事、とでもいうかのようにマーケットは過敏に反応し、
ディテールは見たこともないような動向となっております。
投資家はそろって安全資産といわれる資産へと資金を流し、
市場が、万策つきた日銀の苦境を見透かしたことも手伝い、
2円以上急落するドル円相場をつくりだしました。

あらためて思うのは、非常事態のときこそ、本質が表れるということです。
欧州に根深くある民族問題や、ポンド危機による英国のユーロ不参加など、
事象の背景にある沿革や事情を深く考えさせるうえに、
極東の小さな国が「安全」と評価されることなど、
普段の認識とは異なった、あるいは意識していない本質にふれることができます。
困っているときこそ、声をかけてくれる親友、
塞いでいるときこそ、食事に誘ってくれる先輩、
みなさんのまわりにも、いらっしゃることでしょう。

6月23日の国民投票。BritainがExitするか否か。
世界の3分の1のGDPを占めるEUに注目が集まります。
この日、フランスで開催されているEURO 2016は、決勝トーナメント前の休日。
選手もサポーターも英国の国民投票の結果より、
自国チームの今後が気になっているかもしれません。

かつて世界を制した大英帝国のプライドが、ドイツ主導のEUに対する抱く感情は、
普通ではないですし、日に日に増す「反EU感情」にも肯けます。
一個人の心にある、ごく単純な感情が、
世界経済や国際情勢などの大きな問題の中心にあるというわけです。
妬みや、恨みも含めて、この単純な感情こそが、すべての本質なのでしょう。
だから人間は面白いのかもしれません。

はたして、ルーニー率いるイングランドは初戴冠となるのでしょうか。
EURO 2016の結果も国民投票の結果も注目の的の大英帝国。
闘争の歴史を歩んできたDNAが激しくぶつかる音と、それに呼応する歓声を
インターネットを通じて聞き、梅雨の晴れ間の東京で、羨ましく思うのでした。
いま僕は、東京のオフィスで、ロンドンの懐かしい思い出に浸っています。

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