第11回 『新聞折込広告の醍醐味』

 2回連続して9月10日に行われた早稲田大学のソーシャルアントレプレナー研究会「新聞販売店イノベーション研究部会」の予告と感想を掲載しました。続けて「報告」と「次回の告知」を掲載する予定でしたが、大学の授業優先で10月に開催予定していた教室が確保できず、11月まで延期になりました。そこで「報告」も延期させていただき、本業の折込広告の醍醐味に触れたいと思います。

 さて、折込広告の醍醐味は、単純な一枚の紙のチラシでも「掲載商品選定→制作→印刷→エリアマーケティング→新聞販売店」と多くの人を介在して読者の手元に届くことも言えますが、違った企業のスーパーマーケットの広告を両方広げて、日替わりの商品の価格を見比べたことがあると思いますが、実は、その同じ業種の広告を、企業を同時に同時期に比較することが出来ることが新聞折込広告の醍醐味なのです。企業の戦略までが視得てくることが楽しいです。

 過去になりますが、2004年の年末1週間から2005年の年始1週間、全国のスーパーマーケットの広告を集めて分析したことがあります。その時に味わった面白さ、比較すると企業戦略の違いが視えてくるワクワク感は、収集・分析した時間の苦労を吹き飛ばすほど楽しいものでした。以下に記載するものが、その時の「食品商業2005年3月号」に掲載したものです。新聞折込広告の醍醐味を感じていただければ幸いです。

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≪年末年始GMS・SM広告検証≫
【全国主要都市スーパーの年末年始広告の実態調査】
 一年を通してスーパーマーケット(GMS、SM)の新聞折込広告が活況を極めるのは年末年始の時期、12月25日頃から翌1月8日までの期間に集中する。全国の主要都市にあるGMS、SMが行う年末年始広告の実態に迫ってみた。
 札幌市、仙台市、埼玉県東松山市・越谷市、東京都練馬区・江東区、名古屋市、大阪府吹田市、神戸市、福岡市の12月25日(土)から1月8日(土)までの2週間分の広告を収集し、その中からGMS、SMの広告を選別し、まとめたものが「GMS、SM年末年始 新聞折込広告出稿状況」一覧である。対象広告枚数は37企業52店舗で290枚。2週間という期間内に満遍なく入っているものを選んだが、場合によっては抜け落ちていることがあるかも知れない。その点はご容赦願いたい。

GMSは10企業22店舗の広告を調査した。最初に広告の訴求回数と情報の量について検証した。
調査期間中で一番多い回数、広告を訴求したのは、「25」の東京江東区のアピタ「イースト21」で11回であった。サイズ内訳はB2が3回、B3が4回、B4が4回で、特にB4は火曜特売などの1日のみの売り出しであった。名古屋のアピタと訴求量が違うのは、周辺にジャスコ「南砂」やイトーヨーカドー「木場」があるからと思われる。
次に一番多く情報を発信しているのは、「8」のイトーヨーカドー「仙台泉」でB4換算31枚は、今回調査52店の中でもずば抜けて多い。サイズの内訳はB1が1回、B2が5回、B4が3回で、特にB1は元旦の日の告知で、同じ日に「4」のダイエー「泉」がありB1、「5」のジャスコ「富谷」もB1、「6」の西友「長町モール」もB1と、全国の中でも元旦折込枚数の最も多いのは仙台だと言われているのが納得できる結果になっている。理由は歴史的な行事にもなっている“仙台の初売り”が正月2日から始まるからだ。同地区の他のGMSの情報量は、ダイエー「泉」がB4換算で21枚、ジャスコ「富谷」は17枚、西友「長町モール」は21枚であった。
次に情報量が多いのは、回数の多い東京江東区のアピタ「イースト21」の24枚。三番手はイトーヨードーで、「14」の「越ヶ谷」が23枚だった。ここで見られるようにGMSの中で、イトーヨーカドーが年末年始も一番折込広告を活用しているのが理解できる。

SMは27企業30店舗の広告を調査した。SMも同様に最初は広告の訴求回数と情報の量について検証した。
GMSと同様に、期間中に一番多い回数、広告を訴求したのは、「18」の埼玉県越谷市のマルエツと、「23」の東京都練馬区のいなげや、「43」の神戸市のKOHYO、「48」の神戸市のグルメシティが共に8回折込んでいた。サイズの内訳では、マルエツはB3が4回、B4が4回で、いなげやはB3が6回、B4が1回であった。神戸のKOHYOは全体的にサイズが大きくB2が2回、B3が6回で、グルメシティはB3が3回、B4が5回だった。
SMの中で情報を多く発信したのは神戸のKOHYOで、B4換算で20枚はGMSに匹敵する情報量であった。次に多いのは練馬区のいなげやで、B4換算で17枚であった。
GMSとSMの全体的な比較をすると、GMSの平均回数は5.2回で、情報量はB4換算で13.9枚だが、SMの平均回数は5.8回とGMSより多く、情報量ではB4換算で11.1枚とGMSより少ない。GMSの平均サイズはB4換算で2.66になり、B3より大きいサイズが使用されていることがわかる。SMはB4換算で1.9枚になり、B4が多く使われていることがわかった。

次にGMS、SM共に集客に向けてどのような工夫を行っているかを、広告から読み取ってみる。
最初に目立つのは売り方の工夫で、日にちを限定したり、時間を指定または限定したり、曜日ごとに特価商品を限定しているのが多かった。日替わり企画はGMS,SM限らず殆どの店で行われており、違いは発信する情報全部を日替わりにするか、一部だけをするかである。また、日替わりは“タイムバーゲン”“タイムサービス”“タイムジャック”“タイムショックセール”という呼び方の時間を指定または限定した売り方と併用して使われている。“朝市”“夕市”“夕方いちばんセール”“夕方4時からの市”“夕方特売”なども同じである。次に曜日ごとに特別の日を設定する場合と曜日で特定商品のみを特価するケースと両方よく使われている。日曜市や火曜市などは曜日でセールを行うもので、特定商品のみの場合は“水曜日は牛乳の日”とか“金曜日は惣菜の日”などと1週間の曜日全てに特定商品の名を付けて集客を促しているところも多い。特にSMでマックスバリュ、ヨークベニマル、ヤオコー、マミーマート、ヤマナカ、SUNNYなどが行っている。広告に表示されているため、消費者も何を買う時は何曜日と決めていることが多い。例えばヤマナカの場合は、火曜日は“たまごの日”“冷凍食品の日”、金曜日は“惣菜の日”“パンの日”“野菜の日”と決めている。
次にカード会員に対する割引とポイントカードの増量デーを設けているのが目立つ。カード会員はGMSが多く、ポスフールのポスフールカード、ダイエーのOMCカード、西友のセゾンカード、イトーヨーカドーのアイワイカード、ジャスコのイオンカード、アピタとユニーのUCSカードがあり、特定日にはカード会員は決済しなくても提示のみで5%割引となる。また、決済時に5%引き落とされることもある。ポイント増量デーも集客の重要な要素になってきている。一般的な増量幅であるが、5倍が多い。北からマックスバリュ、イトーヨーカドー、ダイエー、サミット、ジャスコ、大丸ピーコック、阪急オアシス、デイリーカナートイズミヤ、グルメシティ、にしてつストアなどが5倍デーを設けている。仙台市のヤマザワは最高の10倍デーを設けていた。
生活提案なども集客の工夫だが、その中の料理提案=レシピの掲載も重要な要素になっている。東西のSMが定期的にレシピを掲載している。東京のいなげやと神戸のKOHYOで、例えばいなげやでは、「今週のおすすめメニュー」というコーナーで“海鮮寄せ鍋”“中華風豆乳しゃぶしゃぶ”“ヘルシーハッシュドビーフ”“かきのシチュー”“かき鍋”“かきのベーコン巻”“かきのグラタン”“ぶり大根”の8品を掲載した。神戸のKOHYOは、“豚汁”“鶏肉とはくさいのスープ煮”“栗きんとん”“数の子”“たたき牛蒡”“田作り”“黒豆”“生ずし”“角煮”“てっちり”“ビーフストロガノフ”“海鮮キムチ鍋”“味噌煮込み鍋”“ブリトロのおろしぽん酢和え”“鶏の水炊き”“男爵と牛肉のグラタン風”“ササミとグリーンアスパラのキッシュ”“豚の生姜焼”“タラのムニエル・梅マヨネーズ”“舞茸と鴨のヘルシー豆乳鍋”“エビとブロッコリーのママレードマヨネーズ炒め”“牛バラ肉のしょうがいため”“てっちり”の24品を載せている。これだけのレシピ数を載せている広告はKOHYOの前にも後にも無い。

これまでGMSとSMの広告回数と情報量と集客の工夫について述べてきた。一般的にスーパーの年末年始に発信する広告内容は、掲載商品が例年殆ど変わらぬ大掃除用品やお正月用品なので、曜日による若干のズレやサイズの変更があっても基本的な回数などには変化がなかった。しかし、今回の調査でGMSの1社とSMの1社が広告の実施日を大きく変えてきた。以前にもイトーヨーカドーの本部統制の取れた広告展開とジャスコの店舗の要望を取り入れた広告展開の違いを書いたが、今回大きく変えてきたのはジャスコであった。ジャスコは仙台富谷と南砂、八事、熱田、南千里の5ヵ所を調べたが、大きく変えてきたのは南砂と南千里の店で、それ以外は1月1日に初売りの広告を行っている。南砂のジャスコは12月30日にB1を実施し、そのタイトルは「2004・2005年末年始特大号」で、表面は年末の「歳末食品大市」「本年最後のお客さま感謝デー」「大みそか市」「冬物衣料年内一斉値下げ断行ザ・バーゲン」という内容であり、裏面は年始の「2005年イオンの新春初売り」「大均一祭」「お楽しみ福袋」「新春初荷市」である。南千里のジャスコは12月31日にB2を実施、タイトルは簡略に「年末・年始特大号」だけ。南砂と同様に表面は年末の「大〆の市」が半分強で、残りは「招福均一」と年始告知になっている。折込んだ日が31日ということで年末1日の情報量には多すぎたと考えられる。裏面は全部年始の「初売り」「福袋」と新春イベント告知になっている。
SMの九州のSUNNYが年末31日に、表を年末「年の瀬」にし、裏は年始「迎春」を載せていた。確かに以前は、31日の除夜の鐘がなって年が明けるが、3日か4日にならないと小売りの店舗は空いていなかった。そのためにおせち料理を作っていたが、昨今、31日と1月1日元旦の違いは全く無くなって来た。今後、同様の企画が出てくることは考えられる。

【GMS・SMの正月初売りイベントの内容検証】
 年が明け、元旦の新聞に入った折込広告を見るとスーパーやデパートで何か面白いイベントをやっているだろうかと気になる。特に子どもが小さいと風船やお菓子やおもちゃそしてキャラクターショーなどがいつ行われるのかは重要な情報だ。今回、第1部の集客のための工夫にある「新春イベント」の内容を詳しくまとめてみた。別表の「イベント内容」である。全体の傾向としては、売場の規模やそれ自体が商業集積地すなわちショッピングセンターだったりするGMSが多くのイベントを日替わりで行っていることがわかる。それに反してSMはせいぜい干支の置物(ヨークベニマル、)や干支の土鈴(いなげや)、干支の箸置き(マルエツ)、福呼び酉(ヤマナカ)、干支の楊枝入れ(グルメシティ)、干支の石鹸(SUNNY、サンバード長崎屋)のプレゼントを先着順で渡すことを行っている。
 GMSではどういったイベントを行っているか、伝統的な初売りをしている仙台は後述するが、最初にジャスコを見ると仙台を除く4店舗ともほぼ同じ内容で、先着プレゼントがあり、「干支の置物」「干支の絵皿」「和凧工作セット」がある。参加料1回5000円の「おたのしみ大抽選会」は当たればマッサージチェアや液晶テレビが当たるが最低でも5000円の商品券が当たる。1回100円の子供抽選会もある。「大均一祭」は家電・家具が多く割安。衣料品の入った福袋もイベントの一つ。大阪では仮面ライダーのキャラクターショーも目玉になっている。
 イトーヨーカドーのイベントも仙台は別格で埼玉越谷を見ると、メインのイベントは「五百本引き」と「初夢大抽選会」。子供向けに「キティちゃん福笑いプレゼント」「ちびっこビンゴ大会」「コロコロ絵合わせゲーム」「ハローキティオリジナル新春グッズプレゼント」が行われている。新年を盛り上げる「新春もちつき大会」や「お正月ラッキーくじゲーム」などもあり、盛りだくさんである。同じ地区のダイエーは、「新春お年玉大抽選会」「初夢千本引き大会」と似た企画が行われており、子供向けの企画では「ポケモンビンゴゲーム大会」のみでイトーヨーカドーより少ない。先着限定で「干支の楊枝入れ」や「干支の湯のみ」のプレゼントは行われていた。恒例の「福袋」もある。
 名古屋のアピタでは、「新春お年玉くじ」と「UCSカードでお年玉5万円プレゼント」がメインの企画で、子供向けのイベントは「動物ぬいぐるみによるUFO風船プレゼント」「おもちゃ詰め放題」があった。福袋の種類も「レディスショップ福袋」や「キッズショップ福袋」など工夫をしている。大阪のサティも工夫している。先着順のプレゼントには「たち吉干支湯呑み」を使い、子供向けに「ちびっ子ビンゴゲーム大会」「新春ちびっ子ガラポン抽選会」「ふわふわ風船プレゼント」「創作紙芝居」を行っている。「お正月福アート間違い探し」や「ウサハナに会えるよ」それに恒例の「餅つき大会」と「福袋」もあり、他のGMSのイベント内容とは違っていた。

 話は「仙台の初売り」に飛びます。仙台の初売りは、江戸文化文政時代の仙台年中行事に「2日朝早くから店の格子戸をたたいて初売り初買い」と言う記述があるように、伝統的に明治大正時代になっても受け継がれ、その日の買い売りの縁起を担ぐとともに顧客への年頭サービス行事の色彩を強め、商品の価格を上回る豪華景品や買い上高に応じた景品を提供したことで人気を呼び、益々盛大になってきました(「仙台初売りドット混む」から引用)。仙台に店舗がある小売店も、その行事にあやかろうと元旦に入る新聞折込広告に多くの情報を盛り込んでいる。1月2日が新聞の休刊日と重なり、元旦に入る広告は枚数もサイズ合計も日本で一番ボリュームがある。
GMSも他の地区の広告をサイズB2で作っても、仙台だけはその倍のB1の大きさにして圧倒させており、ダイエー、ジャスコ、西友、イトーヨーカドーもB1。新春イベントも規模を一回り大きくしており、比較するとダイエーは、「初夢千本引き大会」「新春お年玉大抽選会」がメインで、子供向けには「子供千本引き大会」「にわとりさんぬいぐるみプレゼント」「サイコロゲーム大会」があり、先着順のプレゼントは他と同じ。イトーヨーカドーも仙台では越谷の「五百本引き」が「千本引き」に大きくなっている。ジャスコは個展対応で仙台向けに、「商品券千本引き」「景品付セール」を行い、子供向けには「仮面ライダーブレイド撮影会」「新春お笑いマイケルショウ」「まんまちゃんと遊ぼう」「ぬいぐるみプレゼント」「ちびっ子ラッキー抽選会」と力を入れている。西友はモールということもあってイベントは「初売り大抽選会」と「お楽しみクジ大会」と少ない。
色々と広告の内容から始まり、新春イベント内容にも触れてきたが、GMS、SMの各社の工夫が伺われた。こうやって並べて見比べてみると、本当に1枚の広告には情報(企業の戦略)が詰まっていることを再度実感した次第。

●年末年始スーパー出稿状況(.xls)
●初売りイベント一覧(.xls)

新聞折込広告
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