折込広告文化研究所の鍋島です。
前回に引き続き、我が関心事、地域をデザインしているイノベーターを紹介します。
へぇ~、こんな面白い人が、こんな素晴らしい人が、いるんだ~と軽く受け止めていただければ幸いです。
「地域イノベーター」シリーズその7
今回の地域イノベーターは、国内に5店舗を構える「離島キッチン」と2017年4月より出身地である秋田県内の東成瀬村を中心に国内に183ある村の食材を使った料理を提供する飲食店「むらむすび」を展開している離島キッチン代表の佐藤 喬(さとう たかし)さんです。
<佐藤喬さん>
佐藤さんは、1976年の生まれで、秋田県の出身。その佐藤さんが何故に島や村と繋がり、食材を供するビジネスに入り込んだのか? はじまり、はじまり。
ところで日本には、いくつの島があると思いますか?
実は6852もの島々から日本は成り立っています。北海道・本州・四国・九州・沖縄を抜くと、それ以外が「離島」。
人が住んでいる島は418あり、離島には独自の食文化が育ち、そんな離島の酒と食が味わえる店が「離島キッチン」です。
佐藤さんは、大学卒業後はテレビの制作会社や広告をつくる会社で働いていましたが、本当は東京と地域を結ぶような仕事がしたいと思っていました。大学院生時代に、スーパーカブで沖縄を除く日本全国を旅した経験もあり、人の暮らしや営みが感じられて土地の食文化が受け継がれているような地域に魅力を感じていたからです。
求人を調べていたら島根県の海士町観光協会で“行商人募集”というのがあり、なんか面白そうと思って応募しました。
海士町に行くのも初めてだし、誰も知っている人はいない。島に渡り、海士町の観光協会の人たちと会いましたが、最初の2日間は延々と宴会が続きました。そして3日目の帰る直前、全員が二日酔いの状態で面接し、多分2日間の宴会で佐藤さんの人柄が見られていたのでしょう。採用が決まりました。
佐藤さん、ところで行商って何をするんですか、と尋ねると、自分で考えてよ、言われたそうです(笑)。
そこは佐藤さん、「自分で決めていいのか」と楽になったそうです。そしてアイデアがフツフツと浮かびました。
幕末に藩と藩が手を結んだ列藩同盟、それと同じ様に島同士も手を取り合っていこう、島同士が繋がろう、と離島キッチンのイメージが浮かびました。
最初は島の食材をつかった料理を供するキッチンカーに乗って移動販売を始めました。
<キッチンカー>
キッチンカーの前で食べている客に「海士町ってどんなところ?」なんて聞かれます。
そこから会話が始まり、まさに料理をきっかけに島のことが伝えられます。
その内に転機がきました。
東京ドームで丼選手権というイベントがあり、参加したら評判になりました。
その次は、デパートの催事にも呼ばれました。
こういった島の食材を使って料理を供することで多くの人に歓ばれ、そして需要があることの手応えを感じました。
佐藤さん、期間限定で店を開いたりしていましたが、ついに2015年に海士町観光協会直営で、都内初の路面店舗となる「離島キッチン 神楽坂店」が誕生しました。
<海士町の牡蠣 春香を供する佐藤さん>
離島キッチンは、現在、神楽坂、札幌、福岡、海士町、日本橋の5店舗で展開しており、1号店の古民家を改造した神楽坂店は、島々の味覚と笑顔のスタッフが、お客様をお迎えしています。
佐藤さんの活動は、止まりません。
島の次は、村だと考えました。
自分が秋田出身だから、秋田県の村から始めようと考え、県南の東成瀬村にしました。
皆さん、日本の最も美しい村連合って、ご存知でしたか?
日本で最も美しい村連合は、NPO法人で、2005年から自分たちの小さくても素晴らしい地域資源や美しい景観を持つ村を未来永劫も存続させるぞ~と始めた運動です。
加入条件は、
- 直近の国勢調査の人口が、概ね1万人以下であること。
- 以下に定める地域資源が2つ以上あること。
景観(生活の営みにより作られた景観をいう)
環境(豊かな自然や自然を活かした町や村の環境をいう)
文化(昔ながらの祭りや郷土文化、建築物等をいう) - 連合が評価する地域資源を活かす活動があること。
美しい景観に配慮したまちづくりを行っている
住民による工夫した地域活動を行っている
地域特有の工芸品や生活様式を頑なに守っている
<日本で最も美しい村連合のメディア>
東成瀬村は日本で最も美しい村の一つ。
そればかりではありませ。東成瀬村産のあきたこまちが、あまりにも美味しかったからです。
東成瀬村を中心に、日本で最も美しい村連合の食材を使って供する「むらむすび」は、離島キッチンのある神楽坂に2017年4月にオープンしました。村と村を結んで発信できたらとの思いで店名は「むらむすび」と決めました。
<むらむすびの入り口>
むらむすびのメニューが面白いです。
「夜の村役場定食」「副村長定食」など。
メニューには食材やお酒の産出村名が記されており、日本にある183村の産物や食材を紹介することで、村と都市、生産者と生活者を結ぶことを考えています。
佐藤さん、やることがスゴイです。単に店を開くだけではなく、その地域を知る、自分ごとにするために、2013年から3年間、東成瀬村の地域おこし協力隊員になり、離島キッチンをしながら、村を知り尽くすための活動もしていました。
神楽坂の坂に面した、こぢんまりとしたおしゃれな居酒屋風の飲食店は、東成瀬村の自慢と魅力を発信するアンテナショップにもなっています。
ぜひ、離島キッチン、むらむすび、一度、食べにおいでなんしょ(長野県飯田弁)。
次回また、素晴らしい地域イノベーターをご紹介したいと思います。
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「鍋島」のプロフィール
鍋島裕俊(折込広告文化研究所 代表)
*1950年、佐賀県佐賀市に生まれる。
*1980年に朝日新聞社系の折込広告会社に営業で入り、その後、出版、マーケティング、社長室、メディア戦略を経て、無事に卒業(2015年)。
*折込広告全国大会の研修会・分科会や本会議での研修講師や基調講演の講師をプロデュースしている。これは業界への恩返しと考えてのサポート。
*研究テーマは、①折込広告の全般研究、②折込広告史の研究、③地域メディアの研究。
*お節介していることは、全国各地のまちづくり・地域づくりの当事者やそれを紹介するメディアの編集者たちを、勝手に紹介・繋いだりすること。
*2014年に「折込広告文化研究所」を設立。
*折込広告に関する執筆は、「商業界」「食品商業」「宣伝会議」「販促会議」「物価資料」など、過去に多々掲載された。
*印刷会社の“街おこし” 一般社団法人マーチング委員会の渉外部長。
*全日本印刷工業組合連合会(全印工連)CSR認定委員会の委員(前認定委員長)。
*その他、数店のお気に入り店舗(飲食店&本屋さん)の口コミ宣伝部長の名刺がある。
*オリケン・セミナーを定期的に主宰(達人シリーズ、著者シリーズ、今が旬シリーズ)。
*facebookでの発信は、多岐に渡る。