第363号『行く時来る時』

大学3年の時、日本エディタースクールの夜間コースに通った。 講師陣の中で最も印象的だったのが、レタリングの授業を担当されていた佐藤敬之輔先生だった。 先生は東京大学で動物学を専攻していたが、思うところ有り、後に京都の寺で

第362号『新たなブランドつくりとは』

深夜、激痛とともに左足が見る間に腫れ上がった。 痛みに耐えかね、秋葉原にある三井記念病院に搬送された。 思えば、二、三日前から左足にピリピリ、チリチリする奇妙な刺激があった。 残儀に耐えないことであるが、ついに痛風持ちと

第361号『適所生存』

もし、生物の原理が、適者生存・弱肉強食のみであったなら、世界はこれほどまでに多様性に満ちてはいなかっただろう。 分子生物学者、福岡伸一氏は続けて言う。 本来、ニッチ(nihe)にはすき間という意味はない。 ニッチとは、巣

第360号『新たな実験』

息子達が、まだ小学生だったころ、12月に入ると急にそわそわしだした。 原因は、「川村家忘年会」という我が家恒例の一大イベントがあったからだ。 このイベントは、薄給から月々蓄えた資金で分不相応な、と言わないまでも、普段はと

第359号『風姿花伝』

六本木ヒルズにある映画館、TOHOシネマズで映画を観た。 巨大なスクリーンと圧倒的な音量。 だから、ここがこの映画を観るには一番、適だと思った。 映画『THIS IS IT』はマイケル・ジャクソンのロンドン公演に向けた、

第358号『普通のこと』

Tから、会社経営の行き詰まりの相談を受けた。 彼は決して、野放図でもなければ怠慢な男でもない。 ただ、現状の変化があまりにはやく、流動的である。 結果、いままでの方法では、利益が生み出せない。 つまり、経営環境の厳しい状

第357号『道徳という名の知恵』

時計職人だった父の日課は、朝の掃除から始まる。 朝7時、住み込みの弟子たちと、はたき掛け、掃き掃除、雑巾掛け、乾拭きと、ほぼ、一時間ほどかけて徹底的に店の隅々まで掃除をする。 なぜ、これほど丁寧にするのか、と問うたことが

第356号『星占い』

「旧友が訪ねてくる。」 銀行での待ち時間、雑誌をパラパラとめくっていた。 その雑誌の星座占い欄にそう記されていた。 しかし、誰か来るでもなし、何事か起こる気配もなく日々過ぎていき、星座占いの記憶も薄れていた。 積んでいた

第355号『旅へ』

ここ2週間ほど、ツアーサービスを展開するJ社のファンサイト制作ため取材を続けている。 対象は50歳以上の十数名。 ツアーを体験した方々にインタビューした。 口々に「楽しかった」「美しかった」「美味しかった」「感動した」と

第354号『谷中散歩』

秋晴れの昼下がり、妻と古くからの町並みが残る下町、台東区の谷中に出かけた。 いままで、行きたいと思いながら行けずにいた街だ。 この日、友人のYさんとそのお友だちの計5名での散策である。 午後二時、地下鉄三田線白山駅の傍に