第27回 音楽の関係を楽しむ旅

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僕は音楽の関係を楽しむのが大好きです。音楽の関係というと分かりづらいかもしれませんが、例えばボブ・ディランはアル・クーパーやダニエル・ラノアのような時々の時代を切り取るアップデイトされたミュージシャンやプロデューサーと音楽を作りつつも、根底にあるのはウディ・ガスリーやハンク・ウイリアムスの様なディランにとってルーツとなる音楽。ボブ・ディランという媒体を通して彼なりのルーツ・ミュージックの解釈が時代に問いかける、時代のミュージシャンとの関係、そしてルーツ・ミュージックとの関係を知り感じることがとても楽しい。その手助けになるのがレコードやCDに付いてくるライナーノーツ。評論家やライターが自らの視点と研究で深堀してくれる指南ノーツです。

最近の新譜ですがチャールズ・ロイドの「アイ・ロング・トウ・シー・ユー」がとってもお気に入り。まだ海外版だけですが、評判が良く近々日本版も発売されるそうですから、ぜひ購入してライナーノーツともども楽しんでみて下さい。
参加ミュージシャンがまたよいのですが、特に二人のギタリスト、ビル・フリゼルとグレッグ・リースのギター・ハーモニーがバツグン。その2本のギターに絡むチャールズ・ロイドのフルートやサックスがなんとも気持ちよい。そしてこの二人のギタリスト、あまりにギター・ハーモニーが素晴らしいので他でも共演していないか調べますと(最近はインターネットがあるので調べるのが便利です)結構色々なアーティストのバックで共演している。その中で目を引いたのがジョー・ヘンリー。名盤「シビリアンズ」でも共演。ジョー・ヘンリーの独特の空間のある音世界をさらに彼らのギター・ハーモニーが艶やかにしています。

そしてそのジョー・ヘンリーはというとプロデューサーとしての腕も素晴らしく、多くのアーティストをプロデュースしていますが、その一つにアメリカのルーツ・ミュージックを自らの感性で掘るカロライナ・チョコレイト・ドロップスがあります。その紅一点リアノン・ギデンズが先日単独初来日。表参道ブルーノートで最高にハッピーかつカッコいいライブを行いました。ドリー・パートンやシャルル・アズナブールなどをモチーフに自身のルーツ・アーティストをカントリー、フォーク、リズム&ブルーズなどルーツ・ミュージックを一つ一つ確認する様に歌いプレイするリアノン。それは今の時代を起点にルーツ・ミュージックの旅を聴衆と一緒に楽しんでいるかの様でした。なんとゲール語で歌う曲も披露(!)空間は一瞬にしてスコットランドへと飛びました。アメリカン・ルーツ・ミュージックの故郷はスコットランドよと言わんばかりでした。

音楽の関係、ミュージシャンやプロデューサーなど横の関係と音楽のルーツを辿る縦の関係。縦横無尽に関係図は広がり深まりますが、その網の中で紐解く作業は音楽の心地よさとともに音楽愛を更に深めてくれる魔法です。
今日は週末、さてまた新たな音楽の関係旅行に出かけるとします。もちろん夢想旅行ですが。

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