第3回 ロング・ヴァケイションに旅立たれた歌人。

ロング・ヴァケイションに旅立たれた歌人。

昨年末の大みそかに大滝詠一さんが亡くなられました。
生存そのものが日本のロックとポップスの系譜のような大滝さんの訃報を聞き、「え?これからどうなるんだ?」と純粋に思いました。
大滝詠一さんは、不世出の作曲家、ミュージッシャン、プロデューサーであると同時にロック、ポップスは元より様々なルーツミュージック(いまでいうワールドミュージック)の生きた百科事典の様な方です。そしてそのなんともいえない整理力と卓越した表現力は一人音楽ステーションといえるまさに音楽の天才。
何より僕の大好きなミュージシャンであり作曲家。個人的にどっしりと喪失感を感じるとともに、月並みな表現ではありますが、日本音楽における宝を失ったという想いに駆られました。

ロック、R&B、ポップス、演歌、ブーガルー、音頭、カリプソ等など様々な音楽を呑み込み時代の音としてアウトプットしていく。
その音はあくまでもキャッチーでシンプル。しっかりと音楽マーケットに届けられながらも、そこにちりばめられたルーツの香りは分かる人をクスっとさせる。
あれ、どこかで同じ感覚があるぞ?と思ったらNHK連続テレビ小説「あまちゃん」にも感じたことです。
官藤さん、大友さん、それに大滝さん、やっぱりどこか何か近いんだろうなあ、感覚が。好きです単純に、この方たち。

昨年、雑誌「ユリイカ」のはっぴいえんど特集で内田樹さんが「大滝詠一の系譜学」を寄稿していました。(なんとも素敵なタイトルです!)
そこで内田さんは大滝さんの真骨頂は「目に見えない因果の意図」を自在に取り出す手際にあると誠に見事に表現されています。
まさにその通りだなあと思います。
キャロルキングをオマージュした「ロング・ヴァケイション」は時代と国を超えた因果関係にあり、全ては“歌”しかも“今の歌”に集約されていることをあらためて意識して再聴すると音楽が誘う旅がもう一段楽しくなります。

ロンバケの様な大ヒットアルバムを世に出し、傍らナイアガラトライアングルの様な通伝する提案を行い、神出鬼没の様にいつ出すとも分からぬレコードリリース。
大滝さんにとってはレコードだけが表現では無く、プロデュースも、楽曲提供もすべてが表現。そしてその真骨頂がラジオ番組だったのでしょう。
ご自身も色々なところで、「自分のアルバム以上のもの」と語るラジオ番組。
ラジオ関東の「ゴー!ゴー!ナイアガラ」をもう一度、通しで聴ける企画をどなたかおやりいただけないものか切に願う次第です。
世界中の(特にアメリカ)音の原石とその時代を歌や楽曲や大滝さんのラジオを通した語りで原体験できたことへ感謝しつつ、哀悼の意を表し今日もターンテーブルにレコードを乗せようと思います。

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