札幌雪祭りも閉幕し、ちょっとずつ春めいた日が増えてくる札幌です。
今年は暖冬の影響で雪が少なく、ちょっぴり物足りない気持ちでしたが雪祭り直前にどさっと雪が積もり数日間は冷凍庫の中で暮らすような状態。
ラジオから流れて来るリスナーさんのメッセージにも、こうでなくっちゃ北海道と喜んでいる声が多かった。当たり前の風景を愛しく感じる気持ちは皆同じです。
冬場は、地物のお野菜が少ない2月にやってくる救世主達が、広島高根島の柑橘です。
柑橘の旬は冬。11月頃から始まる早稲蜜柑、グリーンレモンからスタートし花が咲く6月頃まで、様々な柑橘達が私の教室にもやってきます。
2月の旬はネーブルオレンジ(正式な品種名は小河ネーブル)、下旬にはイタリアでもお馴染み赤いオレンジの実(ブラットオレンジ)もやってきます。
今年は初収穫のベルガモットも届きました。
(稀少な柑橘で香りを楽しむのがおすすめ)オッティモをスタート時、取り扱い作物のテーマを『イタリア料理』に決めて北海道のお野菜中心から始めたわけですが、柑橘の栽培は北海道はないので、広島でご縁が繋がった高根島の生産者小河さんの柑橘達が、この季節に続々やってくると、キッチン中に天然のフルーツアロマのいい香りが広がり心地良くて、私は柑橘の手仕事をする時に柑橘達にお礼を言います。
心の安定を有難う~って!心や気持ちがちょっぴりオーバーフロー気味の方がいたらこのキッチン仕事で癒されて欲しいな。
なんて思いながら幸せを独り占めしキッチンに立っています。
柑橘のチャームポイントは香りだけじゃない。
陽気なビタミンカラー(イエローやオレンジ。葉っぱのグリーン等)にも元気をもらっています。
私は数年置きに瀬戸内の潮騒をゆりかごにすくすく育つ柑橘達(いえ本当は生産者の小河さんに会いたくて)に元気をもらいに訪れています。
生産者の小河さんのお家は、高い山を意味する高根島(とても小さい島ですが、坂がとっても多く見晴らしが最高です)に住んでいる14代続く当主です。
お家もとても歴史のある建物で築100年は超えていて、その周辺に柑橘の木が生い茂っています。
訪れる度、栽培地を車で案内して頂くのですが、車を降りて柑橘の木から木をひょいっと簡単に渡りあるく姿をみた時は、お猿さんみたい!って思ったのが第一印象でした。
黄色に熟したレモンが木に成っている様子なんで北海道に住んでいたらお目にかかれない光景なので、行く度にここはイタリアか?
太陽の力強さも北海道と違います。
時折り吹く潮風だってイタリアの風に負けない陽気さです。
小河さんの育てるレモンは、化学農薬不使用の完全な無農薬栽培です。
スーパーでよく見かける外国産のレモンは安価ですが農薬や防腐剤(ワックス使用)がほとんどで、レモンを使うのは果汁を絞る時だけに使うものだという認識が私の中で打破されたのは、小河さんのレモンと出会ってからでした。
レモンは皮も実も全て食べるもの。
栽培のお話や季節を柑橘でリレーする。
という考えの下、少量多品種で約50種の柑橘栽培に挑戦し続ける姿。
開拓心を今なお継続中の小河さんが発する言葉。
ひとつひとつに愛が満ち溢れていて、会を増す事に大好きになりました。
小河さんが作る柑橘との出会いがなければ、私の柑橘料理のレバートリーだってこんなに無かったかも。
感謝してもしきれない出会いです。
島から送られてくる柑橘の梱包のひとつにしても愛を感じます。
例えば、お任せでリクエストすると、箱の中に柑橘のイラスト入りで入っている順番を記してくれる。
時には葉っぱや枝付のレモンを箱の一番上に添えてある。
レモンの花が咲く時期には、咲いたレモンの花や開花前の花まで一緒に添えてある。
レモンの花の香りを嗅ぐと小さいながらもレモンの香りがしっかりと感じられます。
そして葉っぱ達も同様です。
先日届いたベルガモットの葉っぱは、熱湯を注いでお茶にしてみました。
1煎目はまるで緑茶のような香り、味がします。2煎目は、ベルガモットの香りがぷわ~っと鼻に広がりスッキリ感があります。
ベルガモットを摩り下ろすと高貴な香りがキッチン中に広がり、外が雪国だという事を忘れてしまう程 爽やかで陽気な空間になります。
愛も一緒に込められて届く旬の柑橘。
愛を愛で返す。
私は実も皮も農薬不使用である為についた傷や斑点までも愛おしく感じてしまい夢中で料理やお菓子に没頭してしまいます。
去年から人気の初恋レモンケーキは、小河さんの思い(皮も実も全部食べるもの)に共感し生み出した自慢のケーキです。
甘酸っぱくて可憐なレモンケーキ。
そして小河さんの名前で品種登録された自慢のネーブルオレンジはオリーブオイルととても相性がいいネーブルオレンジは、赤玉葱を少量アクセントに添えて、塩とオイルのみで楽しむシチリアのサラダで楽しむとたっぷりビタミンが摂取出来ます。
何よりも口塩梅(口の中がさっぱりします)がいいのです。
そして私が愛で返すネーブル使いは、ジャムです。
付けたネーミングはまるごとネーブル。
10年以上前に初めてご馳走になった感想が、皮も実も愛おしい。
全部美味しい!でした。
その思いで生み出したのがまるごとネーブルジャムです。
発酵バターを塗ったトーストの上にたっぷり載せて楽しむ朝食。
季節のジャムの中で一番好きです。
愛を愛で返す。
作物にも作り手の愛が宿る。
そして食べて楽しむ私達にも愛が宿る。
美味しいってその繰り返しなんでしょうか。
と思って今日はおしまいにします。
写真は、2年前に訪れた時の自宅上の丘に広がる柑橘畑です。
見晴らしが良くて私のパワースポットのひとつです。