「いすかくちばし」いうコトバがありますね、いすかという鳥のくちばしが前後食い違っているために、ものごとのくいちがうことを例えていうことです。最近は聞きませんが・・・。
この「いすかのくちばし」、意外とマーケティングコミュニケーションには多いのですね。とくによく起こるのがユーザーとデザイナーの価値観の違い。
あるメーカーのお話によれば、デザイナーはとくに気にする項目はデザイン、新しさ、格調など形態や形状に関連するモノであるのに対しユーザーは機能の絞り込み、エラーの起こりにくさ、操作の簡単さなどといった使い勝手を中心とした項目だとか。これはプロダクトに係わることですが、しかし、あらゆる面で留意すべきことでしょう。
どうしてこのようなユーザーニーズとの食い違いが起きるのか、それは「クリエイティブ」と言うコトバに関わりがあるとともに「差別化」というマーケティング用語にも関係があるのではないか、と思います。
差別用語で申し訳ありませんが、かつて「バカチョン」と呼ばれたカメラがありました。爆発的にヒットしたようですがどうもギョーカイ的にはあまり評価されなかった気がします。またCMの世界でも「売り」に結びついた作品は制作者の勲章となることは少ない。これらはどうも同じギョウカイ文化風土に根ざしている気がします。
そして「よい作品」があくまでも造形や表現の範囲のみで決定されている傾向が強いのは気になるところです。いってみれば「美と大衆性は両立しない」、「売れることは本物のデザインではない」という誤解があるのかも知れません。
最近、政治の世界では「マニフェスト」が話題となりつつあり、抽象的な政策論争から数字的な目標を掲げた具体的なプランを持ったより地に足のついた政策論争が期待されているようですが、そろそろマーケティングの世界でも確とした目的指向の戦略にもとづいた動きが出てきてもよいのではないでしょうか?と同時に、かってマディソンスクエアで嫌われまくったという「アヤコーラ氏」*の大胆な提言について、私たちは、いま一度、真剣に考えねばならないとも思います。
*セルジオ・ジーマン:元コカコーラ社マーケティング最高責任者。著書「こんなマーケティングならやめてしまえ」ダイヤモンド社刊