再びプレゼンの話です。
通常、単独であれ、競合であれ、プレゼンのスタートはプレゼンして欲しい商品・サービスについてのクライアントサイドからの説明です。
それをオリエンと呼びますが、競合の場合であれば、提供する情報の平等性を演出するためか、呉越同舟、参加会社が一堂に会し説明を受けるのが慣わし。
クライアントからは、商品の特性、市場の概況、投下できる予算、ならびに計画策定に当たっての条件などが提示されます。
そして最後に「ご質問は?」と問いがあり、そこで参加社から納期など、ややどうでも良いような質疑があります。
当然、突っ込んだ疑問や質問は、ある意味で参加社の思惑を表すものとなる場合もあり、おざなりな儀礼質疑で終始し、めでたく幕を閉じます。
そして、提供されたオリエン資料を参加各社持ち帰るのですが、このオリエン資料たるやお粗末の極み、コミュニケーションプランに役立つことは、滅多にありません。
マル秘と仰々しく判が押されている資料が多いのですが、仰々しさに反して中身は薄い、内容にスタッフ一同、正直困ってしまうケースがほとんどです。
いちばんお粗末なのは、新商品が発売される、それは何時である、したがって何時までに提案して欲しい、企画書と制作のアウトラインが判るものであること、企画書は所定のサイズで、各社何部提出、プレゼン時間は○分以内、プレゼン参加者は何人などなど、で「後はよろしく」と言うもの。
こうした熱意も何もない要請は、協会、団体にとくに多いという印象ですね。
ある場合は、製品計画書と営業計画書からの抜粋が、そのままオリエン資料になっているケースも多いのです。
これはかなりマシなケースと言えます。
しかし、これでは企業の戦略意図は見えません。願望は判りますが・・・。
もちろんこうしたケースばかりではありませんが、まじめにオリエンをしていただいたのは、私の経験に照らして言えば日本を代表する車メーカーだけでした。
なぜこうなるのか?
根底には企業のコミュニケーション活動についての姿勢、さらには企業のマーケティング活動の指向性に大きく関わっているためだと思われます。
とりわけ前者については、企業内での位置づけが「販売支援」としており、マーケティングの一環として十分な位置づけがされていないことでしょう。
その結果、コミュニケーション活動を統括し実施する専門部署、宣伝部、販促部は営業の意向に沿うことが必要とされ、またそれは企画が企業内および企業外に「受けるか?」が最大の関心事となるからです。
またこうした専門部署は、多額の金額を使うににもかかわらず、治外法権的な部署と見なされていて、「変わり者」がいる吹き溜まり組織と見られているのかもしれません。
広告は大道芸人の技であると言うある広告人がおられますが、こうした意見は以上の事情を物語るもののようにも思えます。
こうした考えの反映が、プレゼンへの安易な姿勢、企業内での取り組み「軽さ」に結びついているのではないか?とも思います。
本当にくすぐりやちょとした思いつき、気の利いたジョーク、鮮度のある男女のニッコリが生活者の心を捉え、購入に、さらにはロイヤルユーザーへと育てていく手段なのでしょうか?
有名な元コカコーラのマーケティングCEO*のように「そんな広告なら止めてしまえ」です。
同様に「そんなプレゼンなら止めてしまえ」です。
薄いオリエン、軽い資料などなどまだまだ企業はゆとりがあるんですね。
これもクライアントもまた広告業者はへの期待は「スペース」取りさえやって貰えばいいという考えの表れでもあるのです。
*セルジオ・ジーマン