第130回『女たちの神楽坂』

先日、神楽坂で旧友達と昼飯を食おうと言うことになりました。
平日の昼でしたが、人通りが多く、しかも女性達が大勢。
表参道ほどではないにしろ結構な賑わいです。
噂では神楽坂人気は聞いていましたが、まさかこれほどとは!

ご承知のように神楽坂は古い色街。
女性が徘徊する街イメージにはほど遠い所と思っていたのは迂闊でした。
いま神楽坂が人気を呼んでいるのは何故だろう?
しかし考えてみると成る程、女性を惹きつける魅力に足る街だと思い至りました。

それは巣鴨のとげ抜き地蔵通りが老人達の原宿とするならば、ここ神楽坂は30歳過ぎた熟女たちの原宿ではないかと言うことです。
かつての原宿は、ピンはセレブに、キリはガキに占拠されてしまった結果、彼女らは取り敢えずここに避難してきた「おしゃれ難民」ではないか?です。

巣鴨、神楽坂の両地域に共通するのは、まず神社やお寺があり、それを中心にストリートが形成されていること。
そのストリートに沿って食や買い物を楽しむ店施設のバラエティが豊富で「何でもあり」なこと、それぞれの店がそれなりの個性とこだわりをもっていること、そして多くの店は歴史性と下町らしい庶民性を備えていることなどでしょう。

が、一方神楽坂には巣鴨と大きく違う点があります。
例えば、かつては男が遊んだ悪所の伝統と路地の迷路が醸す多少謎めいて危険な「やばい」匂いであり、それは情報耳年増にはちょっとした冒険への期待・予感となっている気がします。そうした「やばい」非日常性を楽しむには一人では不安。
しかし仲間連れなら安心して気軽に楽しめる。
そこで街は、ちょっぴりグルメで、おしゃれで、おしゃべりをも多いに楽しめる店を用意。
こうしたことが、大人の女性にとっての魅力となっている気がします。
最近目にした資料では「30歳台以上のシングル女性の70%はカレ氏がいない状態」だそうです。
それでは彼女らが恋愛を拒否しているのかと言うと逆。
本音では恋のアバンチュールには好奇心旺盛です。
そんな彼女らが仲間と日中おずおずと徘徊するのが夜は恋人達や不倫の舞台となる神楽坂。言ってみれば昼の神楽坂は安全に好奇心を満足させてくれる、「やばい」&「おとなのくつろぎ」時間が楽しめるシングル女性達のコンビニエンスなストリートなのです。

いまレストランやバーなどの外食ビジネスには明るい材料が少なく、大手ほど経営は失速気味です。
こうした状況を打破するには従来の経費節約型の施策一辺倒では困難でしょう。
例えば目前の4月からの新年度。
お客様には、どのような企画を提案し収益を確保しようとするのでしょうか?
昨年好評だった企画は、そのまま通用するでしょうか?
お客様と一口に言っても若い人、カップル、シニアなどライフステージにより経験体験も期待もそれぞれです。
仮にシングルの女性達に的を絞るのなら、キーワードは「うまい」「やすい」に加えて「ミステリー」「はらはら」の「やばい」ではないか?

こうした価値は従来の価値観ではマイナス。
でもパラダイムシフトには冒険が必要。
甘美な官能的な女達の神楽坂を下りつつちょいワルにはなれない私はかく思った次第です。

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