▼「不思議な国のアリス」から学ぶこと
ルイス・キャロルのこの不思議な童話は、警句に満ちています。
そして、思い出すにつれ、今気になるのは2つ。一つは赤の女王が言う「止まっているためには走り続けなければならぬ」という言葉。もうひとつは主人公アリスが兎の穴に落ちながら学校の生活を思い浮かべて言う「授業Lesson」と言う言葉です。
前者は、まさに現在までの「競争の時代」でのあり方を暗示していますし、事実、この警句をマーケティング学者アンゾフが自著の論文に引用していたのを記憶しています。そして今日まで、企業は競争社会の行動として、現在あるために変らずに競争優位確保を目的に「走り続けて」きています。
もうひとつの「Lesson」はマーケティングのこれからへの警句でしょう。これはある意味、私の独断でもありますが・・・。
▼Less On、捨て続けること
学ぶこととは知識を身につけることなのに、少なくLess し続けるOnってなぜ言うのかしら・・?アリスの素朴な疑問です。「あのお馬鹿なルシーと同じになれ、ということかしら」とさえ考えます。
しかし、考えてみれば、専門家になる、一つの分野にこだわると言うことは、何かを捨て去ることでもあります。あのゲーテのファーストが悪魔と縁を切ることができたのは、彼が蓄えた膨大な知識は何の役にも立たず、すべてを捨て去った時、恩恵が訪れると言う話を私は思い出します。
マーケティングにおいても同様でしょう。ユーザーニーズを考慮して?すべてを盛り込んであることは、何もないこととと同じです。
いま、不況です。物が売れないは合い言葉です。しかし、この停滞現象を経済学者や企業はお金が無いことに結びつけがちですが、それは正しくないことは皆さま、ご承知でしょう。
▼ヒット企業、アップル、GOOGLEに共通なこと
売れない、その原因は、いまが超成熟社会だからです。そして売れないから、あれもこれもサービスと称して大盤振る舞いです。
しかし、一方で「いい商売」をしている企業もあります。例を挙げればパワーブランドであり、アイディアブランドです。
これらは様々な業種に輩出してきていますが、お馴染みは、GOOGLEであり、アップルでしょう。
GOOGLEは検索エンジンですが、この種のサービスにおいては後発です。これがいまや競争から抜けて一歩先にいるのはなぜか?それはかつての王者Yahooのトップページと比べれば一目瞭然です。つまりはYahooは盛りだくさん。Googleは素っ気ないほどシンプルです。ここにサービスつまり顧客への視点、戦略の相違が感じられます。
またアップルは、最近すべて出す商品が大当たりですが、いずれの商品も欠点だらけ?でもあります。
したがって、追随する企業は「なぜ?」と思うばかりの様子が伺えます。
私見ですが、アップルの成功は人の「直感」を信頼するコンセプトではないでしょうか?
I-Pad、I-Pod、I-Phoneなどマニュアルらしいマニュアルは付いていません。
購入者は触っている内に使い勝手わかってきます。言って見れば無用のお節介を切り捨てているのです。
▼いま巷では・・・
9月になり、話題騒然のひとつがエコカー減税補助の終了。駆け込み需要で伸びた自動車市場は大きく縮小するようです。そのため大手自動車メーカー各社は10%から20%の生産調整に入ることがマスコミを賑わしています。
当然、このことは雇用にも響くことでしょう。
しかし、こうした状況は、まさに「赤の女王」の論理に従っている結果です。
つまりいかに多くの一流企業が同じ方向を見ている同質化の競争以外には戦略がないか、を裏付けるものでもあります。そして彼らが守っていることはひたすら止まっていることに過ぎません。
家電はいざ知らず、ましてや自動車は自己表現メディアでもあります。
同質化戦略はブランド戦略の放棄でもあり、さらに官の支援などは、コモディテイ化を促進し、クルマの魅力を自ら損なうものでもありましょう。私なら「お情けのクルマ、生活保護クルマ」に乗ることは恥ずかしいですね。
いまクルマは、必要か、不要かの論議を越えて「欲しい」を創らねばならない時期です。
それには個性や主張が必須ですが、そうした評価を得るためには、一つの価値に絞り込みその他は削って行く勇気が必要でしょう。
エコカー減税補助を期待するのも結構ですが、「補助」など蹴っ飛ばす気概のあるクルマ、心に響くクルマはないものでしょうか?
S/ジョブスではありませんが、「Stay Hungry,Stay Foolish」の潔さが、若者の心を捉えます。
かつてクルマメーカーのプランナーが「クルマは演歌」だと言っていました。
蓋し名言です。
何を戯言を・・・?と、いまの優等生マーケターからは嘲笑を受けそうですが・・・。